新しい音質を楽しめる「楽」とシックな設定が魅力の「欅」
Donguri-楽(RAKU)には、ハウジングのカラーバリエーションで江戸紫(えどむらさき)、濃墨(こずみ)、白磁(はくじ)、紅赤(べにあか)と4種類用意されています。
イヤーピースは音茶楽ブランドと同様、コンプライ製の低反発ウレタンタイプが2サイズ付属します。本体重量が軽いことと、イヤーピース自身の密着力があるため、ストレートに耳穴に差し込むタイプにも関わらず装着安定性は良好です。
当然ながら遮音性も高いレベルで確保されていますが、ハウジング背面にチューニングホールが空いていることもあり、音漏れは若干あります。ただし構造上、漏れるのは中低域の成分で、常識的な音量を守っている限り、周囲に迷惑をかけることもないでしょう。
一聴した印象は、まさしく音茶楽のDonguriシリーズそのもの。解像感の高さ、ワイドレンジな再生能力はまったくそのまま。ただし、音茶楽の欅と比べると、やはりチューニングが異なります。
まず楽の方が低域のレスポンスが高いです。しかしながら、100~200kHzあたりの帯域を強調して「低音出てます」と記号のように主張している安いイヤホンとは違います。全体の解像感をマスクせずに、音楽の躍動感を伝えてくるところが実に好ましい。それに加えて中音域のエッジも立って、よりボーカルが前に出てくる感じ。全体的に元気でにぎやかな印象を受けます。
それに比べると欅は全体的にシックな設定で、はっきり言うと年季の入ったリスナー向きではないでしょうか。私は年季の入ったリスナーなので欅にはグッと来ます。しかし熱量の高い音を、その熱量のまま感じようとするなら楽の方が楽しい。
いや、これは困りましたね。この音の差はエンクロージャーの素材によるものなのか、意図的にチューニングされたものなのかはわかりませんが、質の高い新しいキャラクターが増えてしまったわけです。音茶楽のDonguriシリーズをすでにお持ちの方は、ちょっと試してみませんかとお伝えします。
そして1万円以上、2万円以下の価格帯なら、茶楽音人のDonguriは、ずば抜けて良いお買い物になると思います。1万円以内の予算で良いイヤホンをお探しの方には、ちょっと無理して試してみませんかと後押ししておきます。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ