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大谷イビサのIT業界物見遊山第17回

当世風な「YAYOI SMART CONNECT」登場の背景を妄想する

国産ソフトの雄を本気にさせたクラウドネイティブな新興勢力

2014年07月08日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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中小企業向けの会計ソフト「弥生シリーズ」を展開する弥生が発表した「YAYOI SMART CONNECT」。取引データを自動的に仕訳、外部のアプリケーションからデータを取り込むといういかにもクラウドらしいサービスが、後発のfreeeを強烈に意識しているのは明らかだ。

オールキャピタル英表記に隠された対抗意識

 7月7日に発表されたYAYOI SMART CONNECTは、銀行明細やクレジットカード、電子マネーなどの取引データを連携する外部アプリケーション/サービスから取り込み、会計データに自動仕訳する機能。仕訳されたデータはやよいの白色申告オンライン、弥生会計/やよいの青色申告とも連動し、会計業務にかかる時間を大幅に短縮するという。連携する外部サービスとしては、200万人以上が使うクラウド家計簿「Zaim」や帳簿管理サービス「MoneyLook」のほか、なんとTwiterからの記帳も可能。シンプルさを追求したユーザーインターフェイスも実にモダンで、失礼ながら以前に比べかなりあか抜けた感すらある。

 クラウド時代風なこのYAYOI SMART CONNECTが、昨今中小企業向けの会計ソフト市場でシェアを拡げつつあるfreeeを意識して作られたのは言うまでもない。発表会の資料を見ると、「日々の記帳の煩わしさからお客さまを解放する」「究極の業務効率化は業務そのものを不要とすること」など、ユーザーを煩雑な作業から開放する(free)という表現が随所に見られる。漢字やひらがなでの表記が多い同社のサービスとしては珍しく英表記(しかも弊社のようにオールキャピタル)というのも、やはり対抗意識むき出しだ。freeeがいなければ、Twitter連携までキャッチーな新機能は搭載しなかっただろうと思う。

横綱相撲の弥生を漠然とした不安に追い込んだもの

 弥生の岡本浩一郎社長曰く、Windows XPのサポート切れと消費税率引き上げが重なる2014年は「危機の年」だというが、弥生は絶好調だったようだ。2014年は金額シェアでも高い伸びを示し、特に弥生会計は金額シェアも80%超え。他社と比べても金額ベースで2倍以上の成長を記録し、売上も150億円が視野に入りつつあるとのことだ。弥生会計の登録ユーザー数は優に100万を超えており、しかも年々ユーザー自体が増えている状態。7月時点で登録ユーザー10万を超えないfreeeに比べれば、赤壁の戦いの両軍に近い兵力差があり、弥生は正直横綱相撲といえるだろう。

YAYOI SMART CONNECTについて説明する弥生の岡本浩一郎社長

 では、こんな弥生は本気にさせたのはなにか? (目の前に立ちはだかる巨人ではない)freeeのような新興勢力に対する漠然とした不安は、わからなくもない。圧倒的なインストールベースを持つパッケージ版に対して、クラウド版の弥生オンラインの成長は堅調ではあるが、劇的とはいえない。その点、SNS等で火が付いたfreeeの伸び方は急速というより、予想がつかない。また、クラウドならではのメリットを活かし、freeeがPOSやネットショップ構築、決済や請求書管理など幅広い企業との提携を進めているのも、ライバルとしては不気味に映るだろう。

 そして、なにより弥生の対抗意識に火を付けたのは、エンドユーザーの声ではないだろうか? 「仕訳を自動化する、会計用語を使わない」というfreeeのコンセプトは、今まで会計ソフトを使っていなかった(使えなかった)ユーザーに刺さった。データ復旧や福利厚生サービスなど、つねにユーザー本意でソフトやサービスを作ってきた弥生にとっては、この部分だけはやはり絶対にfreeeに譲れなかったのではないかと想像する。この点、YAYOI SMART CONNECTは、弥生ひいては岡本社長の相当な本気度が感じられ、今後が楽しみなのだ。

 クラウドとモバイルを前提にした新興勢力に刺激され、実力と実績を兼ね備えた国産ソフトベンダーがイノベーティブな製品開発に取り組む。各社のサービスや製品が連携し、1+1=2以上のバリューが生まれる。こんな切磋琢磨とエコシステムが国内のソフトウェア市場に拡がれば、ITを活用したい中小企業は大きなメリットを得られるはずだ。

筆者紹介:大谷イビサ

 

ASCII.jpのTECH・ビジネス担当。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、日々新しい技術や製品の情報を追う。読んで楽しい記事、それなりの広告収入、クライアント満足度の3つを満たすIT媒体の在り方について、頭を悩ませている。


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