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HP APJ Media Summit 2014レポート 第2回

IBMのx86サーバー事業買収はHPにとって追い風か?

Foxconnとの提携や水冷スパコンについてHP幹部に聞く

2014年07月07日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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インドのムンバイで開催された「HP APJ Summit 2014」では、インフラ系の主力製品であるサーバーの分野でも新製品が投入された。初日(7月2日)の講演とインタビューの内容とあわせて、新製品の概要や戦略、APJでの市場動向についてまとめておこう。

IBMのx86サーバー事業買収はポジティブなインパクト

 New Style of ITを実現すべく、HPは「Converged Infrasturacture」「Cloud」「Software-Defined DataCenter」という大きく3つの分野で、技術と製品を投入している。このうち、特に同社が強みを発揮するのが、Converged Infrastractureを構成するサーバー製品だ。運用管理の効率性を追求したラックサーバー/ブレードサーバーのほか、初のSoftware-Defined Serverを謳うHP Moonshot、ミッションクリティカル分野でUNIXとx86サーバーを統合するOdysseyプロジェクトなど幅広い分野で製品・プロジェクトを展開している。

 IBMがx86サーバー事業をレノボに売却した現在、HPはエントリからハイエンドサーバーまで幅広いラインナップを業種業界問わず一気通貫で提供できるほぼ唯一のグローバルベンダーとなっている。HP APJにおいてサーバー部門を統括するスティーブン・ボヴィス氏は、「(PCをメインでやってきた)レノボへのサーバー事業売却が実現されたとすれば、幅広いポートフォリオを持つわれわれにとってポジティブなインパクトをもたらすものだ」と語る。

HP APJ エンタープライグループ HPサーバー担当 バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ スティーブン・ボヴィス氏

 APJ地域でもHPサーバーの成長率は著しいという。中国市場の成長率は特筆すべきものがあるほか、ベトナム、タイ、インドなどの新興国でも高い成長が見込まれるという。また、大型のデータセンターが作られるシンガポールと香港でも多くの受注があるとのことだ。ボヴィス氏は、「クラウドやコンバージドシステムなどさまざまな選択肢はあるが、x86サーバーは5年ごとに更新されることが多いし、今年はWindows Server 2003のサポート切れ問題もある。日本や韓国でも堅調に推移するだろう」と語る。

Foxconnとの提携でクラウドプロバイダーのニーズに応える

 一方で、HPは5月に台湾のFoxconn(鴻海科技集團)との提携を発表している。Foxconnは、多くのグローバルベンダーの製造を請け負うODMベンダーとして知られており、今回の提携では、クラウドプロバイダー向けのサーバーの開発を両社で進め、グローバルで10社程度の契約を目指すという。

 この背景には、大手のクラウドプロバイダーが自社の要件にあわせたサーバーを直接ODMベンダーから調達するようになっているという市場動向がある。「クラウドプロバイダー市場では、いるもの、いらないものをカスタマーが選択し、テイラーメイドで製品を作らなければならない。そしてラージカスタマーは、価格の要求がとても厳しい」(ボヴィス氏)。

 今回の提携では、こうしたクラウドプロバイダーのニーズに応えるべく、HPとFoxconnが両社の強みを発揮するという。ボヴィス氏は、「FoxconnはIP(知的財産)の面、HPはコスト競争力の面で弱みがあるので、これらをお互いで補う。具体的にはHPがIPとデザインを提供し、プリセールスまで行なう。Foxconnは製造とサプライチェーンの強みを生かし、直接製品を顧客に納品できる」と語る。そして、こうした特定用途の製品開発はそのままHPのナレッジになり、汎用製品の開発に活かされるという。

独自の水冷設計を持つApollo 8000

 New Style of ITを実現するHPのサーバー製品は、顧客の成果を念頭に設計が行なわれ、おもに従来型、ミッションクリティカル、ハイスケーラブル(HPC/パブリッククラウド)、プライベートクラウドの4つのワークロードに最適化されているという。

 このうち、今回のイベントで発表されたのは、HPC(High Perforamance Computing)システム向けの「HP Apolloファミリ」だ。1ラックに最大144台を格納できるという高い集積密度でありながら、標準のラックサーバーの最大4倍という高いパフォーマンスを実現する。

NRELと共同開発されたApollo 8000

 発表されたのは、水冷式の「Apollo 8000」と空冷式の「Apollo 6000」の2機種。このうち水冷式のApollo 8000は地球外での太陽光発電を実現するNREL(National Renewable Energy Labs)という研究機関と共同開発したモデルを一般向けに提供するという。

 Apollo 8000はハードウェアを保護する独自の水冷設計を投入し、高い電力利用効率を実現している。サーバーの中で特に熱くなるプロセッサーとメモリに水冷コイルを通し、冷却を行なう。冷水を必要とするわけではなく、常温の液体を採用するという。

Apollo 8000では水冷のコイルをプロセッサーとメモリの周りに配置している

 冷却媒体として水は空気より1000倍効率的と言われているが、技術的な難易度が高く、システムのダメージリスクがあるため、導入が進まなかった。これに対して、Apollo 8000では水の流れを完全にハードウェアと独立させており、リスクがないという。「万が一、コイルが破損しても、すぐに蒸発するようになっているので、部品にかかることはない」(ボヴィス氏)。サーバーの分野でもこうしたイノベーションは継続的に続けていき、他社ベンダーに差を付けるという。

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