V-NANDは2次元NANDよりも高速で
耐久性に優れ、消費電力が低い
V-NANDには、容量以外のメリットもある。1つは速度。製造プロセスが20nm未満に微細化された2次元NANDでは、セル間の干渉によるエラー発生を防ぐため書き換え時にデータのベリファイを行なう必要があるのに対し、V-NANDは干渉がほとんど発生しないためベリファイ作業を簡略化したシンプルなアルゴリズムで書き換えができる。これによって、約2倍高速な書き換え処理が可能となり、速度が向上する。
次に耐久性。V-NANDでは、「CTF(Charge Trap Flash)」という方式のセル構造を採用している。2006年にサムスン電子が実用化した方式で、2次元NANDで採用されている「プレナー方式」という構造のセルに対して2~10倍の耐久性(書き換え可能回数)を誇るという。そのため、従来よりも2倍以上の耐久性が実現されることになる。
最後に消費電力。先ほど紹介したようにV-NANDではセルの書き換えアルゴリズムが簡略化されることで、シンプルなアーキテクチャーでアクセスが可能となる。つまり、少ないステップで書き換えが完了するため、消費電力の低減につながるというわけだ。
データセンター向けV-NAND採用SSDも登場
ところで、今回の発表会では850 PRO以外にも製品が発表された。それが「845 DC PRO」と「845 DC EVO」で、双方ともサーバー用途をターゲットとしたエンタープライズ向けの製品。845 DC EVOはすでに出荷が開始されており、845 DC PROは7月に登場予定だ。
845 DC PROは、セルを24層に積層したV-NANDを採用しており、非常に優れた耐久性を実現する製品だ。845 DC PROは800GBと400GBの2モデルが用意され、保証期間こそ5年間だが、総書き換え容量は800GBモデルが1万4600TBW、400GBモデルが7300TBWと圧倒的な容量が保証される。
加えて、双方とも1日あたり10回の全領域書き換えも保証。大量のデータが書き込まれるデータセンター用サーバーをメインターゲットとした製品だ。
それに対し845 DC EVOは、V-NANDではなく2次元NANDを採用する製品だが、840 EVOと同じ3bit NANDを採用する点が大きな特徴。3bit NANDを採用するサーバー向けSSDはこれが世界初だという。3bit NANDを採用しているため、総書き換え容量は845 DC PROよりもかなり少なく、960GBモデルが600TBW、480GBモデルが300TBW、240GBモデルが150TBWとなる。
ただ、3bit NAND採用の845 DC EVOは、総書き換え容量こそ少ないものの、読み出し速度はハイエンドSSDとほぼ同等で、コストも安い。サーバーの中には、動画配信などコンテンツ配信に特化したものも少なからず存在する。
コンテンツ配信サーバーはデータの読み出しが中心となり、データを書き込むのは配信データを追加する時ぐらいで、書き換え頻度は非常に少なく、総書き換え容量が少なくても大きな問題とはならない。つまり845 DC EVOは、そういった読み出し中心のサーバーをターゲットとした製品というわけだ。
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