このページの本文へ

3次元NAND「V-NAND」がテラバイト世代SSDの架け橋になる

2014年07月02日 11時00分更新

文● 平澤 寿康

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

V-NANDは2次元NANDよりも高速で
耐久性に優れ、消費電力が低い

 V-NANDには、容量以外のメリットもある。1つは速度。製造プロセスが20nm未満に微細化された2次元NANDでは、セル間の干渉によるエラー発生を防ぐため書き換え時にデータのベリファイを行なう必要があるのに対し、V-NANDは干渉がほとんど発生しないためベリファイ作業を簡略化したシンプルなアルゴリズムで書き換えができる。これによって、約2倍高速な書き換え処理が可能となり、速度が向上する。

20nm未満の2次元NANDではセル間の干渉によるエラーを防ぐためベリファイが必須

V-NANDはセル間の干渉が発生しないためベリファイを簡略化でき速度が約2倍に向上

 次に耐久性。V-NANDでは、「CTF(Charge Trap Flash)」という方式のセル構造を採用している。2006年にサムスン電子が実用化した方式で、2次元NANDで採用されている「プレナー方式」という構造のセルに対して2~10倍の耐久性(書き換え可能回数)を誇るという。そのため、従来よりも2倍以上の耐久性が実現されることになる。

V-NANDはCTFというセル構造を採用することで、2次元NANDに比べ2~10倍の耐久性を誇る

 最後に消費電力。先ほど紹介したようにV-NANDではセルの書き換えアルゴリズムが簡略化されることで、シンプルなアーキテクチャーでアクセスが可能となる。つまり、少ないステップで書き換えが完了するため、消費電力の低減につながるというわけだ。

V-NANDは書き換えアルゴリズムがシンプルで少ないステップで書き換えが完了するため、書き換え時の消費電力が低減される

V-NANDの消費電力は2次元NANDに比べ46%も低減されるという

データセンター向けV-NAND採用SSDも登場

 ところで、今回の発表会では850 PRO以外にも製品が発表された。それが「845 DC PRO」と「845 DC EVO」で、双方ともサーバー用途をターゲットとしたエンタープライズ向けの製品。845 DC EVOはすでに出荷が開始されており、845 DC PROは7月に登場予定だ。

データセンター向けSSD「845 DC PRO」と「845 DC EVO」も発表された

 845 DC PROは、セルを24層に積層したV-NANDを採用しており、非常に優れた耐久性を実現する製品だ。845 DC PROは800GBと400GBの2モデルが用意され、保証期間こそ5年間だが、総書き換え容量は800GBモデルが1万4600TBW、400GBモデルが7300TBWと圧倒的な容量が保証される。

845 DC PROは24層積層型V-NANDを採用するサーバー向けSSDだ

800GBモデルで1万4600TBWと圧倒的な総書き換え容量を保証

 加えて、双方とも1日あたり10回の全領域書き換えも保証。大量のデータが書き込まれるデータセンター用サーバーをメインターゲットとした製品だ。

シーケンシャル・ランダムアクセス速度も十分に高速だ

 それに対し845 DC EVOは、V-NANDではなく2次元NANDを採用する製品だが、840 EVOと同じ3bit NANDを採用する点が大きな特徴。3bit NANDを採用するサーバー向けSSDはこれが世界初だという。3bit NANDを採用しているため、総書き換え容量は845 DC PROよりもかなり少なく、960GBモデルが600TBW、480GBモデルが300TBW、240GBモデルが150TBWとなる。

845 DC EVOは3bit NANDを採用する初のサーバー向けSSDだ

3bit NANDを採用するため、総書き換え容量が少ない

 ただ、3bit NAND採用の845 DC EVOは、総書き換え容量こそ少ないものの、読み出し速度はハイエンドSSDとほぼ同等で、コストも安い。サーバーの中には、動画配信などコンテンツ配信に特化したものも少なからず存在する。

書き込み速度はそれほど速くないが、シーケンシャルリードおよびランダムリードは845 DC PRO同等か匹敵する速度となる

双方とも、長期間稼働した場合の速度の低下も少ないという

845 DC PROはデータベースサーバーなどの書き換えが多く発生する用途に、845 DC EVOは読み出しが中心のコンテンツ配信サーバなどに最適となる

 コンテンツ配信サーバーはデータの読み出しが中心となり、データを書き込むのは配信データを追加する時ぐらいで、書き換え頻度は非常に少なく、総書き換え容量が少なくても大きな問題とはならない。つまり845 DC EVOは、そういった読み出し中心のサーバーをターゲットとした製品というわけだ。

→次のページヘ続く (3bit版V-NAND採用SSDを秋に発表!?)

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中