自社だけでも、他社だけでも成り立たないソニーらしいテレビ開発
だが、その一方で、「黒字化は通過点であり、ゴールではない」とも語る。
では、ソニービジュアルプロダクツが目指すゴールとはなにか。
今村社長は、その方向性を「ソニーのBRAVIAが欲しいと言ってもらえるのかどうかが大切。そして、ソニーらしい製品と思ってもらうことが重要である」と語る。
それを具現化する考え方が、今村社長が比喩する「縦糸と横糸をつむぎあわせて、繊細で、強いタペストリーを編んでいくような事業形態」ということになる。
ソニーらしさと垂直統合だけでは乗り越えられないハードル
今村社長がいう縦糸とは、ソニーが持つ独自技術のことだ。そして、横糸とはコモディティ化した部品や、標準的なプラットフォームなど、他社が生産したものを指す。
「ソニーはややもすれば、自分たちの技術や、自分たちの主張で垂直型のビジネスを展開する傾向がある。昨今の世の中の流れをみると、それだけでは事業は成立しない。一方で、世の中の水平型の流れにすべてを飲み込まれてしまっては、ソニーの差異化が発揮できない。だからこそ、縦糸と横糸の組み合わせが必要だ」
4K対応テレビを例にあげれば、液晶パネルは横糸だ。ソニーは、液晶パネルの生産工場を待たずに、外部から調達することになる。このコモディティ化した液晶パネルを使いながらも、制御技術や回路技術などによって、ソニー独自の価値をつけることが縦糸の役割となる。4K対応テレビで、高画質、高音質を実現するためのこだわりもソニーの縦糸だ。
「コモディティ化したパネルに、新たな命を吹き込み技術が、ソニーの縦糸。これは、4Kだけでなく、2Kテレビやローエンドテレビにおいても同様だ」と今村社長は語る。
「縦糸によって、ソニーならではの画質を提供していくことができる」
インド市場向けに投入した2Kテレビは、市場調査をした結果、明るい色をよりビビットに表現した色調が好まれることがわかり、同じパネルを使っていても、他社とはまったく異なる色調を実現した。
この連載の記事
-
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ -
第580回
ビジネス
コンカーの第2章は始まるのか、SAPの生成AIを使って効率的な経費精算を -
第579回
ビジネス
AIの筋トレはいまから始めるべし、マイクロソフト津坂社長がCopilotの議論から得たもの -
第578回
ビジネス
大赤字からの再起はかるバルミューダ、その足掛かりは? -
第577回
ビジネス
日本の強さは量子力学におけるトンネル効果があるため、量子と出会い、広げよう - この連載の一覧へ