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業界人の《ことば》から 第98回

独自技術だけでも、コモディティー技術だけでもテレビは成立しない

公約の黒字化達成、課題抱えソニーテレビ事業会社が発足

2014年07月02日 09時00分更新

文● 大河原克行

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自社だけでも、他社だけでも成り立たないソニーらしいテレビ開発

 だが、その一方で、「黒字化は通過点であり、ゴールではない」とも語る。

 では、ソニービジュアルプロダクツが目指すゴールとはなにか。

縦糸(=独自技術)と横糸(=コモディティー技術)をつむぎあわせて、繊細で、強いタペストリーを編んでいくような事業形態を目指すと今村社長は話す

 今村社長は、その方向性を「ソニーのBRAVIAが欲しいと言ってもらえるのかどうかが大切。そして、ソニーらしい製品と思ってもらうことが重要である」と語る。

 それを具現化する考え方が、今村社長が比喩する「縦糸と横糸をつむぎあわせて、繊細で、強いタペストリーを編んでいくような事業形態」ということになる。

ソニーらしさと垂直統合だけでは乗り越えられないハードル

 今村社長がいう縦糸とは、ソニーが持つ独自技術のことだ。そして、横糸とはコモディティ化した部品や、標準的なプラットフォームなど、他社が生産したものを指す。

ソニービジュアルプロダクツが入居するソニーシティ大崎

 「ソニーはややもすれば、自分たちの技術や、自分たちの主張で垂直型のビジネスを展開する傾向がある。昨今の世の中の流れをみると、それだけでは事業は成立しない。一方で、世の中の水平型の流れにすべてを飲み込まれてしまっては、ソニーの差異化が発揮できない。だからこそ、縦糸と横糸の組み合わせが必要だ」

 4K対応テレビを例にあげれば、液晶パネルは横糸だ。ソニーは、液晶パネルの生産工場を待たずに、外部から調達することになる。このコモディティ化した液晶パネルを使いながらも、制御技術や回路技術などによって、ソニー独自の価値をつけることが縦糸の役割となる。4K対応テレビで、高画質、高音質を実現するためのこだわりもソニーの縦糸だ。

 「コモディティ化したパネルに、新たな命を吹き込み技術が、ソニーの縦糸。これは、4Kだけでなく、2Kテレビやローエンドテレビにおいても同様だ」と今村社長は語る。

 「縦糸によって、ソニーならではの画質を提供していくことができる」

この場所は、もともとは本社第三工場と呼ばれ、ソニー独自のトリニトロン方式カラーテレビが誕生した地でもある

ソニーの85型4Kディスプレイ。W杯の4K映像を48時間以内に全世界に配信した 400 4K対応テレビのBRAVIA KD-65X9200B。高画質、高音質、デザイン、UXが特徴だ

右がKD-65X9200Bの磁性流体スピーカー。振動板素材にグラスファイバーを採用することで、音のクオリティーを向上させている

オーディオ基板を独立した形で搭載。これも音質向上に貢献している

 インド市場向けに投入した2Kテレビは、市場調査をした結果、明るい色をよりビビットに表現した色調が好まれることがわかり、同じパネルを使っていても、他社とはまったく異なる色調を実現した。

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