REX-KEB02AKを試聴!
バランス出力では空間の広がりが増す
試聴はAK120IIとデジタル接続で聴いてみた。角形光―ステレオミニ光ケーブルを使用して両者を接続して使っている。アンバランス接続での音は、AK120II単体に比べるとちょっと柔らかな質感になると感じた。
音の粒立ちや解像感などに大きな差はない。印象的なのは弦楽器のみずみずしい再現で、弦の艶やかな音色もしなやかで気持ちいいが、さらに胴の鳴りを感じさせる厚みが加わっており、より肉厚な感触となる。
ジャズでも、切れ味の鋭さよりもしなやかさが感じるられる再現で、よりスムーズで聴きやすい音になったと感じる。テンションの高さはやや控えめになるが、ベースやドラムの音の厚み、安定感ではこちらが上回る印象だ。特に低音の伸びのよさと響きの豊かさにより、よりスケール感が豊かになる。
DSDでは、ギターの音色のニュアンスが、音に厚みを増したことでより充実感のあるものになる。弦の振える感じと胴が鳴っている感じがよく伝わり、生身の人間がギターを弾いているというイメージが濃厚になる。ボーカルを聴いても、身体全体を使って声を出している感じになるというか、より生々しさが出てくる。
バランス出力は、ラトックシステムが用意している純正アクセサリーの「RCL-KEBSH1C/CR」(実売価格9000円前後)を使用した。ヘッドフォン側はMMCX端子で、アンプ側が2.5mm2極端子×2となっている。このほかの純正アクセサリーとして、ゼンハイザーのヘッドフォン用の端子を持ったものもある。
バランス出力にすると、厚みのある音色はそのままに、空間の広がりが一段と広くなる。クラシックではオーケストラの楽器の配置がまさに目の前に現われたような見通しのいい再現になる。
ジャズを聴くと、表現力がいっそう高まっているように感じた。音色が大きく変わったわけではないのだが、空間の広がりや音の粒だちが明瞭になることで、リアルな音像がひとつの空間の中に存在しているような、音楽全体のまとまりのよさが高まっていると感じる。
音像がしっかりとした距離感を持って定位し、音の響きはどこまでも伸びやかに広がっていく。このバランスのよさはなかなかのものだ。
DSD音源は、ギターやサックスといった楽器の音の生っぽい感触がさらによく出る。バランス出力で空間感がよく出ていることは感じるが、それ以上のS/Nの向上で細かな音がクリアになり、楽器のリアルな存在感が感じられる。
AK120II単体ではやや細身に感じられるものの、力強さと鮮度の高さを感じるレスポンスのよさが大きな魅力。REX-KEB02AKは音の感触がやわらかになり、切れ味のいいレスポンスはやや控えめだが、音色のふっくらとした感触やリアルな質感が優る。
価格的にはいまいち釣り合いが取れていない組み合わせではあるが、高解像度や高忠実度だけでなく、アコースティック楽器やボーカルをよりナチュラルで気持ちよく聴きたいという人には、組み合わせての使用をおすすめしたい。
スピーカーでの音場感に近い再現を
味わえることが魅力のバランス出力
AK120II単体、ポタアンのREX-KEB02AKを組み合わせて、それぞれのバランス出力を試してみたが、総じて言えるのは空間の広がりや音場感がさらに豊かになること。
最短距離で音が耳に届くヘッドフォンやイヤフォンは、スピーカーのような目の前に広がるような音場感が得られることは少なく、頭の中でミニチュア化されたステージが再現されがちだと僕自身も考えていたが、バランス出力になるとスピーカーによる再生とは異なるものの、豊かな音場感や空間の再現性という点では、かなり近いレベルに迫ってくると感じた。
携帯プレーヤーやポタアン、ヘッドフォンを交換して得られるグレードアップとは方向性が違うというか、新しい味わいがひとつ加わったような驚きがある。
対応するヘッドフォンが比較的高級機に限られるうえ、ケーブル交換が必要になるなど、なかなかハードルが高いバランス出力だが、得る物はかなり大きいと感じた。ヘッドフォン再生で高音質を極めたいと考えエうなら、ぜひとも挑戦してみてほしい。
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