ポタアンはヘッドフォンをきちんと駆動させるもの
ただし高音質化という副産物が注目を集める
ポタアンは、以前から海外メーカーを中心に数多くのモデルが発売されてきている。それまではマニアックなアイテムだったが、大きく注目されるようになったのは、2012年に発売されたソニーの「PHA-1」(実売価格4万円前後)以降だろう。
日本の大手メーカーが参入したことで多くの人から広く認知されるようになってきた。現在では、国内メーカーも続々と製品をリリースしており、さらなる盛り上がりを見せている。
ところでポタアンって何? という人もまだ少なくないだろう。一般的にアンプ(厳密にはパワーアンプ)と言うとスピーカーを駆動するためのものだが、ヘッドフォンアンプは文字通りヘッドホンを駆動するためのアンプ。
ヘッドフォンは適応インピーダンス(抵抗の適合範囲)が恐ろしく幅のある製品で、スピーカーがせいぜい4~8Ωくらいの幅に対し、ヘッドフォンは数10Ω~数100Ωにもなる。それだけに、多くのオーディオ機器が内蔵するヘッドフォン出力では、十分な対応が難しく、ヘッドフォンを愛用するオーディオマニアは昔から専用のヘッドフォンアンプを使っていた。
以前は据え置き型のコンポサイズのものがほとんどだったが、音楽リスニングのスタイルの変化に伴い、PCと併用できるコンパクトなものや、バッテリーを内蔵したポータブル型が登場してきた。これがポタアンである。
そもそも、ヘッドフォンアンプは能率の低いヘッドフォンや極端にインピーダンスが違う業務用のモニターヘッドフォンをきちんと駆動することが主要な役割なので、スマホのヘッドフォン出力で十分な音量が得られるならば、わざわざヘッドホンアンプを組み合わせる必要はない。
しかし、オーディオアクセサリーとしてはもうひとつの重要な役割がある。それが音質のグレードアップだ。
特にスマホは、バッテリー寿命を延ばすため、ヘッドホン出力の電力消費をなるべく小さくしたい。そもそも一昔前のPC以上の性能を手の平サイズに凝縮したものだから、本格的なオーディオ回路を備えるスペースにも制約がある。
というわけで、高音質という点においてはかなり不利な条件が整っているわけだ。だから、内蔵バッテリーで十分な電力供給ができ、オーディオ性能に特化した回路を独立して備えるポタアンを組み合わせれば、スマホの音質をかなりのレベルでグレードアップできる。
また、一般的なオーディオ機器と同じように、メーカーやモデルによって音質の個性も異なるため、単純な質的グレードアップだけでなく、自分の好みに合わせて音質をチューンアップする楽しみも味わえる。
スマホを使った気軽なリスニングから、より本格的な音楽鑑賞にジャンプアップするには最適なものと言えるだろう。
デジタル接続で音質的にも有利なUSB DAC内蔵ポタアン
今回取り上げるのは、現在の主流と言えるスマホとのデジタル接続が可能なUSB DAC内蔵ポタアンだ。国内メーカーが発売しているモデルもすべてこのカテゴリーとなっている。
今からスマホ用にポタアンを選ぶならば、USB DAC内蔵で携帯プレーヤーやスマホとデジタル接続(microUSB)ができるものが有利だろう。デジタル接続ならば、スマホ内部のノイズの影響を最小限にできるなど、音質的にはさらに有利になる。
最近では、ポータブル型でもリニアPCMなら192kHz/24bitは当たり前、DSD音源にも対応のものも増えており、USB DACとしての機能は本格的なものになっている。
ただし、これはPCとの接続時だ。携帯音楽プレーヤーにはハイレゾ信号のデジタル出力に対応したモデルもあるが、対応するポタアンも限られるなど制約が多い。
スマホでは多くの場合、デジタル接続時はサンプリング周波数が48kHzに変換されてしまう。これはiPhoneなどのiOS端末もAndroid端末も同様だが、Android端末はメーカーにより細かな仕様が異なる。このため、ポタアンがスマホとのデジタル接続に対応していても、実際に使っているAndroid端末で正常に動作するかどうかはわからないことが多い。
この点については、ポタアンメーカーのホームページなどで動作検証されたモデルを確認するといいだろう。
(次ページに続く、「ソニー PHA-2」)
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