超高級iPhoneバンパー「SQUARE」の最新作と、DAQの面白い3Dプリンター活用
2014年06月25日 17時30分更新

SQUAIRの最新作、DURALUMIN BUMPER QUATTROとiPhone 5。金属の色も、本体と合わせて丁寧に選び抜かれている、吸い付くように一体化するバンパー
今週は東京です。霧とカラリとした晴天が続くのサンフランシスコから梅雨時の日本に帰ってくると、湿度の高さを懐かしく感じることができます。不快指数に直結する湿度も、どこか空気に、よりエネルギーが蓄えられている、そんな東京で見つけた、面白いiPhoneバンパーのプロモーションをご紹介しましょう。
超高級iPhoneバンパーシリーズ「SQUAIR」
株式会社DAQは岐阜を本拠地とする企業です。ファッションアパレルのビジネスから新たに参入したのは、iPhoneケース「SQUAIR」シリーズ。しかし、この言葉をあえて選びましょう、非常に“変態的な”逸品を作り上げてしまいました。
冒頭の写真でも紹介した、SQUAIRの1作目「Curvacious Bumper」は、iPhoneを縁取りするアルミニウム合金「超々ジュラルミンA7075」製のバンパーです。軽さと強度を併せ持つ合金ジュラルミンを使い、日本にある宇宙レベルの金属加工技術を惜しみなく生かし、表面の質感までコントロールする特殊な電解塗装を施す。
バンパーそのものの精度が出すぎてしまい、これだけ精密そうに見えるiPhone 5sのボディの切削精度を超えるという、感覚的にスッと理解することが難しい事態が起きてしまったそうです。微妙な個体差を吸収するためシリコンを内側に仕込まなければならないほどに。
「メイド・イン・ジャパン」であることはもちろんのこと、世界でも唯一無二の存在でだということがおわかりいただけるのではないでしょうか。毎月生産量が限られているというそのバンパーを装着したiPhone 5sは、金属にも関わらず柔らかく暖かみのある手触りと、好きだったiPhone 3G/3GSの丸みを帯びた握り心地が復活するのです。
SQUAIRの2作目は「Mesh Case」。プラスチック並みの軽さと最高レベルの固さを併せ持つアルミニウム合金「超々ジュラルミンA7075」を0.4mmの薄さまで切削し、全体にメッシュ加工として穴を開けました。ところがこの穴、単なるまっすぐな穴ではなく、背面の曲面に垂直になるように斜めの穴が開けられていたのです。
加工には、「5次元切削」が用いられているといいます。切削器が縦と横の2軸で動くのが2次元、これに高さ方向での動きをしたのが3次元。ここまではわかります。しかしドラえもんのポケットの中の4次元を超えた、5次元とはどういうことでしょう。DAQが用意したビデオを見てみて下さい。
なるほど、切削器だけでなく、土台になっている部分も2軸で動くから、「3+2」で5次元というわけです。こうして、金属のケースにも関わらず、33gという軽さ。iPhone 5sに装着すると、ちょうどこちらも懐かしい、iPhone 4S位の重さになります。
ただ、ノスタルジーだけでなく、きちんとiPhoneを落下や傷から守ってくれます。吸い付くようにぴったりの寸法でiPhoneと一体化し、サイズとデザインを見て「iPhoneだ」と認識するプロほど、「何そのAndroid?」と聞かれるほど、まったく別のものへと変えてくれます。
3作目で改善されたジェットセッター御用達のアイディアとは
精密すぎる金属のiPhoneバンパーとケース。パーツはコネクターがある1辺を除く3辺を囲うような部分と、底のパーツの2つ。これを極小のネジで2箇所留めると、継ぎ目もわからなくなるほど、ピタっと吸い付くのです。しかしこのねじ止めの作業は、きちんと部屋を明るくして、落ち着いた気持ちでやらなければなりません。
一度装着してしまえば良いじゃないか、と思われるかもしれませんが、筆者は米国と日本を行き来している関係で、飛行機の中でSIMカードを入れ替えなければなりません。しかし飛行機の微妙な揺れの中で、人生で扱ったなかで最も小さなネジを毎回落とさずに付け替える自信はありません。落としたら最後、見つけることはほぼ不可能でしょうから。
この意見は、米国でこのケースを見せた感想でも多いものでした。金属加工に対しては、非常に驚き、感嘆の声を上げるのですが、ネジ止めしなければならない点は、やはり敬遠の材料になります。
そこでDAQが編み出した新作が、DURALUMIN BUMPER QUATTRO。金属バンパーにも関わらず、なんとねじ止めナシでパチっと完璧に本体に固定する「ITOIGAWAラッチ」(特許申請中)というアイディアを作り出したのです。今までは2つのパーツでしたが、今度は1編ずつ4つのパーツに分かれ、両サイドをぱちっとはめ込む形で完成します。
最薄部0.23mm、1/100mmの誤差も許さない加工精度によって特殊構造のラッチが作られ、再び登場の5軸加工機で施された側面ディンプルは、ため息が出る美しさでした。

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