「リサ充」呼ばわり必至のリサジューモード
こう言ってはなんですが、いまどきのシンセアプリなのに、なぜプラットフォームはiOSではないのか。理由は簡単です。iOSでは3Dの立体表示ができません。
DSN-12の最も面白いところは「世界初3D表示オシロスコープ画面、ウェイブおよびリサジューモード搭載」の部分にあります。この3Dのオシロスコープ画面、特にリサジューモードがヤバい。
ここで言われる前に言っておきますが、リサジューはリサ充ではありません。この図形を考案したフランスの物理学者リサジュー(J.A. Lissajous)さんのお名前にちなんだものです。XY軸に表す2つの波形を合成し、それを図形として表示するわけです。
レコーディングスタジオのコントロールルームでも、このモードでのオシロ表示はよく見かけます。ステレオのLR信号を入れて、位相差や定位を見るのに使われているようです。しかし、3D化するとこんなことになろうとは。普段シンセサイザーで音作りをしているコルグのみなさんも想像していなかったそうです。
DSN-12のリサジュー図形は、3次元なのでZ軸の数値も持っています。これはXの値を微分したものだそうですが、周波数や位相の変化で複雑なパターンを描きながら図形が立体的に変化していく様子には確実にやられます。
端的に言えばドラッグです。もう少し平穏な表現を使うなら、最初にシンセを触ったときの没入感に似ています。どっちにしてもハマったら最後、ずっとやり続けることになります。
一度ハマってしまうと、シンセサイザーのパラメーターを使って図形を操作することに夢中になるあまり、もはや音楽を作る気はなくなります。そして気が付くと「びえーっ」という、ただ変な音が出ているだけということになりがちです。
はたから見ると、これは確実におかしい人です。もし、この状態に名前を付けるなら、リサジューで充実しているのだから、やはり「リサ充」以外にないのかも。
ですが、体験としては素晴らしく新鮮です。
図形をイメージしながらパラメーターを操作するという「逆引きシンセ」のような発想に変わってゆく。そこでは音を作るためのアナログ・シンセサイザーとしての構成は、もはやどうでも良いものになっていくわけです。
そうした行為に関して我々はまだ定義する言葉を持っていません。ゆえに、この体験が何であるのかを一言で言い表すことができないわけです。