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クラウド時代のSIが生き残るための差別化手段

顧客の前でプロトタイプはできる?新しいSIビジネスはkintoneにあり

2014年06月30日 14時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp イラスト●野崎昌子

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レガシーSIer曰く、「俺のショバに手を出すな!」

 そんな同社に大手小売り販売会社からkintoneを使った開発案件について声がかかった。その小売り販売会社は商社から雑貨やインテリアなどの商品を仕入れ、自社ブランドの店舗で販売するというビジネスを展開している。しかし、近年商品数が拡大し、納期の管理が困難になってきたという。従来Excelとメールで管理していた納期管理を、kintoneに置き換え、店舗や担当者がリアルタイムに納期をチェックできるようにしたいという。さっそくホウジョウとフウマは小売り販売会社の情報システムの担当者との打ち合わせに向かった。

情シス担当者:わざわざ、すいません。おおまかな発注書は目を通していただいたと思うんですけど、商社が納期を登録し、そのデータベースを直接店舗から見て、そのまま発注できるようなものにしたいんです。納期管理だけであれば、kintoneでなんとかできそうなんですけど、受発注まで含めると、基幹システムとつなぐ必要があって、実績のありそうな業者さんにお声がけしているんです。

ホウジョウ:はい。納期管理や基幹システムとの連携は、弊社でも実績があるので、問題ないと思います。ところで、kintoneについては、どこで知ったんですか?

情シス担当者:昨年ASCII.jpさんの記事を読んで興味を持ち、さっそく試用してみたんです。すごくいいシステムだと思うのですが、うちの部長はピンと来ないようなので、実はkintoneを使うというのは必須要件ではないです。まあ、私はぜひ使って欲しいのですが……。来週、部長にプレゼンしてもらって、別のSIerさんとコンペになります。

ホウジョウ:なるほど。

情シス担当者:ちなみにコンペになるのは、水落電算システムさんです。たぶん、フルスクラッチのシステムを提案してきます。

ホウジョウ:水落電算さんですか……。

情シス担当者:はい。昔からの付き合いで基幹システムの開発を手がけているのですが、正直動きが遅くて……。とはいえ、やはり部長の印象は大きいので、提案よろしくおねがいします。

フウマ:でしたら、デモで使えるデータを一部お貸しいただけますか? プロトタイプを作ってきますので。

情シス担当者:わかりました。後ほど送ります。

 こうしてコデラとの打ち合わせから帰る際、ホウジョウ、フウマはエントランスで、水落電算システムのイマガワにばったり出くわした。明らかに待ち伏せだ。もともとホウジョウの先輩だったこともあり、最初から戦闘態勢だ。

イマガワ:おおっ。ホウジョウさんじゃないか。ご活躍はいろんなところで聞いているよ。クラウドだか、なんだか、薄利多売のビジネスをがんばっているそうじゃないか。

ホウジョウ:イマガワさんこそ、部下がどんどん辞めているというじゃないか。ホストコンピューターにつぎはぎのアプリケーションを積み上げて、人を貼り付けるビジネスなんて、先があるはずがない。お客さんも幸せにならないぞ。

元部下だけにイマガワもやる気満々。クラウドビジネスに賭けるホウジョウも負けられない

イマガワ:うるさい! どうせ多くの情シスは、外部の業者におんぶに抱っこなんだ。こっちは予算獲得の作戦会議から、稟議書の作成、商社への発注書の作成まで、本来情シスがやる仕事を全部肩代わりしてやっている。これくらいもらって当然だ。とにかく、うちのショバには手を出すな。

ホウジョウ:そっちも汚いことは止めて、きちんとお客様への価値を考えて、提案しろよ。

イマガワ:あんなkintoneなんておもちゃのようなアプリで商売なんてできるか。そこの新人さんも、いつまでもそんなブラック企業にいないほうがいいぞ。

 捨て台詞を吐いて、イマガワは去っていく。長らく基幹系システムをメインにウォーターフォール型の開発を手がけてきたイマガワが、いきなりクラウドベースのkintoneに乗り換えるとは思えない。1週間後の提案でどのような提案を持ってくるか、不気味であった。

(次ページ、決め手はプロトタイピング!レガシーSIerに勝つ)


 

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