飯山工場で電源を見守る、品質向上の立役者に直接聞いてみた

マウスコンピューターの電源の“ド安定化”は厳しすぎる品質確認が生み出した

文●林佑樹

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黒岩氏の電源品質確認環境は自作

 マウスコンピューター「飯山工場」の黒岩氏の電源ユニットの品質チェックは、まず日本の安全規格である1200Vが通るかどうかから始まり、次に工場規格である1600Vを通し、60Hzの交流もかける。さらに2200Vも通った電源ユニットが次のチェックに進めるという。最初からハードルが高いように思えるが、こういったチェックが“ド安定”電源ユニットにつがっているのだろう。なお「個人的に2200Vは通らないと面白くないんですよ」と、さわやかにいう姿が印象的だった。

2200Vの耐圧試験を行なう黒岩氏

こちらはアース導通試験。電源コネクタのアース端子と筐体の間に25Aを流し、100mΩ以下であることを確認する

 次に自作のチェック環境が登場。使い勝手と好きに負荷をかけられる環境を考えた結果、下記写真のような構造に着地したという。

自作感溢れる品質テスト環境の一部

 各ラインの電圧を自由に可変できるように、それぞれの接続先に「パワーMOS FET」を用意している。つまみを回すと負荷が掛かり、ラインごとにチェックしていくと電源ユニットの良し悪しがわかるというわけだ。そのデータはモニタリングされており、PC側でデータ管理といった工程。もちろん、オトナの事情で一部のみの説明なので、本来のチェックはもっと“嫌らしいこと”をするそうだ。

各ラインの計測機器

 話していただいた範囲では、ホコリを用意してホコリに埋もれさせてみたり、湿度の高いホコリ(電源ユニットからするととてもイヤな状況)で確認しているとのこと。また湿度の高い状況でホコリを多くして、スパークが生じないかといったチェックもしているという。スパークは燃焼ではないのだが、一般的なイメージではスパークを見ると「燃えた!」と思われ、大騒ぎになってしまう。

このつまみで負荷を調整する

漏れ電流のチェック中。どうしてもピリっときてしまうので、それが安全なライン(0.5mA以下)であるか確認する作業だ

 さて、一部としつつ、相当なチェックを紹介してくれている黒岩氏。とくに重要視しているのは、電源ユニットの中のサブ電源だという。現在の電源ユニットは、動作中のPCに電力を供給しているメイン電源に加え、停止時にも電力を供給し続けるサブ電源が入っている。PCの電源スイッチは電子式だが、ここに電力を供給しているのがサブ電源だ。電源スイッチを押すとサブ電源からスイッチオンの信号が出て、それによってメインの電源が動き出すのだ。

 最近では、PCがシャットダウンしている際にも機器を充電できるUSB端子を搭載するPCが増えてきたが、この電力もサブ電源が供給する。より重要性は高まっているが、サブ電源はいまだ回路設計が最新ではなく、レガシーな方式のままで苦労しているそうだ。

この機器で電源の状況をモニタリング

モニタリング結果はPC側でデータ収集している


(次ページ「徹底的した品質チェックと電源メーカーとの協力体制で安定環境を提供する」へ続く)