電気で味覚をハックせよ!
次に電気味覚研究で知られる東京大学大学院の「あぱぱ」さん(中村裕美博士)が、アーク放電を利用した「エレクトリックピクルス」を披露。
さらに特製の導電素材に包まれたフォークを握り、チーズが舌に接触すると電気が流れて味が変わるというデモも見せてくれた。実際に体験すると、舌先にピリリとした刺激を感じるとともにアルミホイルを噛んだときのような味が広がる。そしてだんだんと濃くなっていくチーズの塩味から、人間の味覚は電気刺激の影響を受けるのだなと身をもって理解した。
このイベントは科学実験的な側面が強いかと思いきや、ここで「タモリめし」の著者である「オバ」さんが登壇して、「タモリカレー」や「生姜焼き」といったオーソドックスなメニューを手際よく調理し始めた。
オバさんは、あめ色玉ねぎペーストを手にしながら「タモリめしのポイントはいい意味で手を抜くこと。タモリさんは道具もテフロン加工のフライパンを使うなど、便利だと思ったものは進んで取り入れている」と解説。2時間煮込んだカレーを味見させてもらったが、1口目よりも10口目に「これはウマイ!」と唸る味わい深さだった。
誰でも幼少期に一度は絵本で読み、憧れる夢のメニュー「ぐりとぐらのカステラ」の再現にも挑戦した。
やはりクレイジーキッチンというべきか、登場したのはなんとダチョウの卵。重量は1338グラムで、持ってみるとずっしりとした重みを感じる。つるつるとした冷たい殻に覆われた卵はまるで頑丈な作り物のようで、こつこつと叩いたぐらいでは割れる気配が全くない。卵の底をタオルで固定し、周りをペンチで叩きながらヒビを入れて、わずかにできた隙間に指を差し込んで割ると、中からはジェルのような卵白とドロリとした黄身があらわれた。普通の鶏卵のおよそ20個分だという。
あとはパウンドケーキの要領で生地をつくり、バターをたっぷり塗ったフライパンで焼きあげていく。途中経過を確認すると、表面は焦げているが中まで火が通っていない。結局、絵本のような丸い形にはならなかったが、参加者はどこか懐かしい味のカステラをほおばりながら「ぐりとぐらはフライパンとたき火でカステラを完成させていたけれど、無理じゃないか。あれは本当にうまくできたんだろうか」と笑いあっていた。夢のレシピを現実に持ち込んだ際に起こる、ちょっとした齟齬もまた面白い。