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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第44回

ハードウェアの発表がなくてもよくわかる、Appleの新OSに学ぶビジネスのヒント

2014年06月27日 09時00分更新

文● 前田知洋

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「正しい共有」Family Sharing

 新機能、Family Sharingでは音楽、映画、アプリなどを家族で共有することなどができます。また、子供が親のクレジットカードを使うときに許可を得る機能を含めるなど、デジタルネイティブを視野に入れている。一見、何のこともないように思えるかもしれませんが、「世代を超えたファンを作る」という意味では、今回、最も筆者が注目している部分です。「3ヶ月先のことがわからない」といわれるIT業界で、ユーザーの世代交代を意識し、「10年先、20年先を見据える」戦略。

 上で紹介したHealthでも、自分の血圧、運動、心拍数などのデータを主治医とリアルタイムで共有できる。以前も「車とITのマリアージュ、スマートオペレーションの現状は?」でも紹介しましたが、シリアスな体調不調が起きたら救急車が自動で要請されるなんて未来が、すぐそこにあるのかもしれません

Healthよるデータ連携を表明している医療関係団体

「広くて狭い開放」Touch IDなど

キーボード、カメラのAPIなどと同様にTouch IDを使ったアプリも開発できるようになった。

 今回、新しいキーボード機能が話題ですが、デベロッパーに提供される新機能のひとつに、iPhoneの指紋承認システムTouch IDがあります。筆者は、ショッピングをするたびにクレジットカードやら、優待カードやら会員カードを出すのに一苦労。サイフに無くて特典が受けられないこともしょっちゅう。

 それだけでなく、ネットショッピングでもIDやパスワードで苦労しているのは、筆者だけではないはず。だからこそ、そんなことがTouch IDで済むなら、こんな便利なことありません。個別の指紋情報はiPhoneから外部に出ないのも、Touch IDが安心できるところです。

 そんなセキュアな部分をデベロッパーに開放したところに、「アプリを開発する人のことも忘れてない」という説得力があります。「言葉だけではない、『提供』の絶妙なバランス感覚」。これが無いと業界全体のエコシステムが成り立ちません。

新しくなったApp Storeは様々な機能が追加された。

 今回の「Appleの新OSに学ぶビジネスのヒント」、いかがだったでしょうか。いつもWWDCのライブを見て感じるのですが、未来が楽しそうで希望が持てそうな気がする。それこそが、WWDCが開発者だけでなく、世界中から注目される秘密だと、筆者は想像しています。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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