円を一周させて一小節の演奏になるが、それをさせないのがコツ
画面右側のRUNをタップすると演奏が開始されます。演奏の開始位置は円周右側のピンク色の枠からで、演奏がスタートすると時計回りに光が動き、光一周分がちょうど一小節分の演奏となります。ちなみに、この個々の色がついた枠をアプリ内では「セクター」と呼んでいます。
SECTORの面白さは、光が円を一周する流れを変えたり、またひとつのセクターから隣にではなく、違う場所のセクターに光を向かわせて(つまり光が円を一周しない)、リズムのズレやアクセントを演出するところ。演出はMAPとSEQとWRPの3モードで変えられます。
MAPモードでは円内をタッチし、セクターの行き先を変えられます。初期設定では光が左隣のセクターに100%向かうように矢印が指されています。これに対し、光を向かわせたいセクターにフリックしてパーセンテージを調整し、どのくらいの優先度でセクターに向かってほしいのかをコントロールします。この設定をすべてのセクターでセッティングできます。
たとえば16分割されたセクターの中で、スタートから2個目、5個目、9個目、13個目をそれぞれ25%の確率でセッティングすると、リズムループが4分の4、4分の3、4分の2、4分の1のビートに切り取られてそれぞれ25%ずつの確率で再生されると、ほぼどこに向かうかわからない状態になります。冒頭で言った「確率を操れる」というのは、ひとつのセクターから次のセクターへ行く確率を変えられる、ということを意味しています。
25%ずつに設定したとしても、切り取られたループがどの順序で再生されるかまではわからず、あくまで100分率の乱数任せになるのも面白いです。
逆に行き先のセクターへの優先度を0%にすることでそのセクターを常にスキップすることも可能です。セクターの数を増やせばさらにランダム性も上がります。セクターの数の増減は前述のSNDメニューからで調整できます。
画面左側のコントロールは、セクターのセッティングをランダムに変更したり、行き先を取り消したりする機能です。
音の流れを把握するためのSEQとセクターにエフェクトをかけるWRP
SEQモードでは円の内側に○が並び、この○に好きなセクターの色を設定することができます。ここでもカラーの点の大きさで各セクターを演奏する優先度を調整でき、色が大きいほど優先度が高く、色が小さいほど優先度が低くなります。
WRPモードでは、各セクターにスクラッチやノイズなどの全22エフェクトから最大4種類設置でき、各エフェクターのかかる確率もセッティングできます。エフェクトのかかり方は様々な波形を見て選択でき、矢印を逆方向に設定すると逆再生でエフェクトをかけることも可能。アクセントになる4拍ごとのセクターに異なるエフェクトを差し込んだ上で、ランダム性を強調してみるとわかりやすいと思います。
それぞれのモードのセッティングは画面左下の「M.S.W」の1~4にそれぞれプリセットできるので、シンプルなセットからこだわり抜いたセットまで、あらかじめ作っておけばシームレスに切り替えることができます。
画面右下には4つのセクタープリセットがあり、瞬時に自分で選んだセクターへと演奏を飛ばすことができるので、リアルタイムなビートの切り替えやいわゆるGlitch(リズムを寸断してアクセントを与える)演出に使えます。DJでいうところのスクラッチして曲の頭出しをするようなイメージです。
同じ演奏は二度とできないのが魅力
ループの再生時に起こり得るほぼすべての事象を確率設定することで、正確なビートループに予想外のアクセントを差し込むことができます。確率の上とはいえ、シーケンサーに意志を持たせて擬人化したかのような面白さは唯一無二の存在だと思いました。
同じ演奏は二度と聴けない、という本来人間だけが持つ部分を機械に持たせてくれるSECTOR、ライブ演奏のリアリティーをさらに先鋭化させたようなアプリでした。
藤村 亮(ふじむら りょう)
1981年生まれ、Ibanez製7弦ギターを手に世界を渡り歩くロックミュージシャン。2006年にバンド"AciD FLavoR"の7弦ギタリストとしてメジャーデビュー。2008年よりベルギーのインディーズレーベルと契約し、"Ryo Fujimura"としてソロ活動を開始。ヨーロッパ最大の日本文化イベント"JapanExpo"や各国のJ-Musicイベントにゲスト参加した。2012年からは活動の幅をメキシコにも広げ、3度のライブツアーを敢行。さらに、2013年11月にはヨーロッパツアーを終え、2014年1月1日から一日一曲アップロード企画「Daily Sound Scape」をSoundcloud上で開始。
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