米ジョウボーンのスペシャル・プロジェクト担当バイス・プレジデントであるバンダー・アンタビ氏が、日本経済新聞社・総務省が主催する「2014世界ICTサミット」での講演のために来日した。ジョウボーンは「UP」および「UP24」という、リストバンド型のライフログセンサーを販売している会社だ。
一方、先日のWWDC 2014では、iOS 8の「Health」と呼ばれる健康アプリと、その開発環境である「HealthKit」が発表されたばかり。また、WWDCでは何のアナウンスもなかったが、かねてからウワサの「iWatch」は心拍センサーを内蔵するという説もある。こうした競合製品に対してどう対応するのか。ジョウボーンの企業としての方向性を聞いてみた。
バンダー・アンタビ氏
スタンフォード大学で電子工学の学士号および科学工学経営の修士号を取得。2008年ジョウボーン入社。グローバルな販売網の構築に向けた契約業務、オンライン事業、広報・マーケティング・事業開発のグローバル展開など、ジョウボーンの国際的な事業展開において大きな役割を果たす。
デバイスとユーザーの理解をつなげる「Internet of You」を目指す
―― 最初に今回の講演について少しお聞かせください。
アンタビ 来日した目的はInternet of Things(インターネットで認識可能なコンテンツを持った機器=モノのインターネット)についてお話することです。たとえばスマート温度計というものは、ユーザーが暑いのか寒いか、歩いたらなぜ暑く感じるのか、熱があるのか、ジョギングから帰って来たからなのか、それを検知するものだと思います。
ただし、モノはユーザーを理解しているわけではない。我々のミッションはそのつながりを作ること。我々はそれを「Internet of You」と呼んでいます。そのリンクを完全にするのはウェラブルデバイスですが、我々が多く投資を行っているのはソフトウェアとデータです。
ライバル会社はたくさんあります。が、ハードウェアにフォーカスしている製品は、数週間、数ヵ月で、ユーザーは使わなくなってしまう。それは次の行動を起こすデータがないからだと思います。
まずハードウェアは24時間着けられることが大切です。たとえば話題のスマートグラスですが、メガネは寝る前に外してしまうものです。スマートウォッチも寝る前に外してしまいますし、フィットネストラッカーは特定の運動時に付けるものです。
これらの問題を解決するのがUPで、我々は「ライフスタイルトラッカー」と呼んでいます。着けたら自分の生活から消えるもの、着けているのがわからないものです。
UPを90日以上使い続けているお客様は80%いて、1週間に平均20回アプリにアクセスしているという結果があります。ここまで顧客を結びつける製品は、使う人の生活に影響する力が出てきます。
我々が毎週カウントしているデータ件数は5億件です。そうした歩数や、睡眠時間、睡眠の深さを関連付けると、女性は平均よりも多く睡眠した場合、その翌日の活動は明らかに活発になるといったことがわかります。これがInternet of Youにどう影響するのか。
近い将来に、UPとミュージックプレイヤーを関連付けます。するとジムで運動する前に、より運動のモチベーションを上げるような音楽を流すといったこともできます。さらに、もっと将来の話になると思いますが、僕が気に入っているのは、ジョギングした後に水をドローンが持ってきてくれるというアイディアです(笑)。
―― ありがとうございました。最後のアイディアはエキサイティングです。いくつか質問させてください。UPはほかのウェラブルデバイスに比べて、装着時間が長いということですが、防滴性能はあっても防水仕様にはなっていません。シャワーやお風呂など、24時間着けっぱなしを期待するなら防水性能は欠かせないと思うのですが、いかがでしょう?
アンタビ シャワーや雨の中で使うのは問題ないはずです。我々が避けるようお願いしているのは、お風呂や水泳など、完全に水に浸けることです。これは水圧にセンサーが弱い部分があるからです。ですが将来に向けて、ここは戦っています。
―― PCで同期できるようになりませんか? 僕は先日iPhoneをなくしてしまい、その間同期する方法がなかったのですが。
アンタビ ほかのデバイスも模索していますが、今はiOSとAndroidしか対応していません。携帯をなくした場合は、友達の携帯を一旦ログオフしてもらって、自分のアカウントでログインすることで、データを同期するという方法もあります(笑)。