それで結局、Tizenエコシステムは立ち上がるか?
そのTizenの成功もSamsung一社では無理だろう。現在3つあるTizen製品のすべてがSamsung製。Samsung以外のメーカーがTizenスマートフォンを出せば、エコシステムにとって大きな後押しになるだろう。Tizen AssociationにはSamsung以外のメーカーとして、Huaweiと富士通が参加している。
だが、モバイル業界でこのパターン(最大手のメーカーがオープンなOSプロジェクトを率いること)はうまくいったためしがない。Nokiaという重鎮がありながら、Symbianが成功していたのは共同出資だったからだ。
SymbianはNokiaが買収してオープンソースにした後に腰折れしてしまった。その後、Nokiaがハイエンド用にIntelと立ち上げたMeeGo(Tizenの前身でもある)では、Nokia以外に採用するモバイルメーカーはいなかった。業界団体がうまくいかないという点なら、LiMo Foundationの例もある。
これに加えて、Tizenは当初力を入れていたキャリア(NTTドコモとOrange)がスマートフォン導入を延期したという「過去」もある。2月のMWCでTizen Associationチェアマンをつとめる杉村領一氏(NTTドコモ プロダクト部技術企画担当部長)は、Tizenをシルクロードにたとえ、「誰もが交易できるしっかりとした土台を作っていく」と戦略を語っていたが、業界の動きは速いのも事実だ。
Samsungは、Tizen成功のためには自社売上の15%を占める必要があると語っている。Samsungのスマートフォン戦略にとってAndroidがメインであることに変わりはないが、TizenはAndroidが対応できない市場で展開していく計画という。
なお、時代はモノのインターネットであり、Tizenもスマートフォンのほか、ウェアラブル、車(IVI)向けのプロファイルを持っている。今後はカメラ、TV、家電などに拡大していくという。イベントではIVI 3.0の展示、スマートTV向けのSDKとプロトタイプのリリースなどを行なっている。スマートフォン以外がエコシステムの着火点となるか――現時点ではそうは見えないが。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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