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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第137回

想像も付かない新しい音を期待したい

Uni-Vibe復刻は30年止まった楽器の考えを一新させるため

2014年06月07日 12時00分更新

文● 四本淑三

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言葉が音を作る上での縛りになってはいけない

―― 三枝さんがUni-Vibeを設計したときに、こういうものを作ってくれというニーズはあったんですか?

三枝 なかったような気がしますね。

―― でもニーズがないところに「こんなものができたから売ってみるか」というのも、いま考えるとすごい話ですよね。

三枝 それは簡単な話です。お金がかからなかったんですよ。今はどの会社もそうだと思うんですけど、型を起こして大量生産して、何万台単位で売りたいですよね。ところがこの当時は、秋葉で部品を買ってきて、注文があったら作ればいいくらいの、軽いノリだったんです。

―― 量産を前提にはしていなかったわけですね。

三枝 当時のうちのリズムマシーンだってね、ツマミが引き物(旋盤加工)だったんですよ。型じゃないんですよね。楽器の売れる台数なんてたかが知れている。スイッチ屋さんに、音色の切り替えボタンを作るのに交渉しても、そんな台数じゃっていうんで、断られたんですよ。だから既製部品の組み合わせで、楽器を作っていたんです。

―― では、今Nuvibeを出す意味はどこにあると思われますか?

三枝 答えになっているかどうかわからないですけれど、エフェクターというのは20、30年ほど、考え方がストップしていますよね。単純にいろんな効果をつないだだけで。新しいものができなくなっちゃったんですね。それはね、多分、言葉が定着したからかなと私は思っているんですよ。

―― 言葉、ですか?

三枝 Uni-Vibeの頃は、エフェクターなんて言葉はなかったですから。エフェクターがなければ、テープの回転を操作したりとか、自分の音楽に合った音を作る、もっといろんな方法を探したはずなんです。でもエフェクターというものがあると、カクカクシカジカでこう操作してと、何か音を作る上での縛りみたいなものができてしまう。特に「空間系」とか「歪み系」とかいう言葉ができると、その範囲でしか考えないですよね。

―― たしかにそういうくくりは昔はなかったですね。

三枝 それは設計者の中にもあるんじゃないかと思うんです。こういう歪みを得るためにはこうだとか。そういったところが、新しいエフェクターがなかなか出ない足かせになっているんじゃないか。でも、この(Uni-Vibeの)時代というのは、何をやっても良かったんです。

―― 音が面白ければ。

三枝 そう、音が面白ければ。でも今は若い人が設計するにしても、ミュージシャンや営業から来る要望と言ったら「何とか風」とかね。確かにジャンル分けというのは何かを理解した気持ちになっちゃいますよね。小説でも映画でも。でも、そういったところからは新しいものは出にくいんじゃないかな。

(次ページは、「ミュージシャンは設計者が予想しない使い方でいい音楽を作る」)

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