個体差の大きいUni-Vibeと、そのイメージに近づけるNuvibeの仕組み
―― いわゆるUni-Vibeのクローンとも音を比べたりしました?
森川 しましたね。でも、やっぱり違うなと。
三枝 中にはCdSを使ってやっているところもありますよね。
森川 それでもCdSはバラつきが大きいので、音が違うんですよ。
―― YouTubeなんかを見ていても、オリジナルのUni-Vibe自体も個体によって随分音が違いますよね。
三枝 昔の部品というのは20%くらい各々の部品の誤差があるんですよ。それが全部集積すると100%超えたりしますから。それと、部品が足りないとかで、最初の設計と少しずつ変わってきているんですね。だから物によって音が違うことは間違いないです。それに、世の中にはUni-Vibeの回路図というものも出回っているんです。
森川 検索すると手書きの回路図が出てくるんですよ。
三枝 そのうち、もっとも普及しているあるひとつのものは間違っています。その原図を描いたのは、たぶん私だと思うんだけど。というのは配置がまったく同じですし、言葉も同じなんです。ただ、それを写した人が結線を間違っちゃったんですね。それが世の中に出回っています。
―― 市場に出回っている数も多くない、個体差も大きい、回路も間違って伝わっている。ということは人によってUni-Vibeの音のイメージも違うわけですね。
森川 最初はこれがなかったんですよ(WAVEスライダーを指さしながら)。CdSが独特な波形を出力していることがわかって、普通のLFOを作る回路ではうまく再現できなかった。だったら、こうやって作ってしまおうと。
―― つまり、このスライダーでLFO1周期分の波形を描くわけですね?
森川 そうです。
三枝 MS-20のオプションでSQ-10※1というシーケンサーがあったんですけど、最初はまずシーケンサーで波形を作って、これにつないでみたんですね。
森川 それで結構行けるんだなということがわかりましたね。
※1 「SQ-10」は1978年に発売されたアナログのステップシーケンサー。iPad用アプリ「iMS-20」にもシーケンサーのインターフェース画面として登場する。
(次ページは、「言葉が音を作る上での縛りになってはいけない」)
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