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ビッグデータでの活用を踏まえたBIプラットフォーム

レポーティングから統計解析、自動化まで見据えたSpotfire

2014年06月04日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「TIBCO Spotfire」は、データをビジュアルに可視化&分析するいわゆるBIツール。フィルターを使ったスピーディな分析が可能なほか、統計解析の技術を取り込み、業務のオペレーション化や自動化までを見据えた高度な分析まで実現するという。

意思決定者が自らデータを分析できる

 TIBCO Spotfire(以下、Spotfire)は簡単な操作でデータの可視化と組織的な意思決定を支援するいわゆるBI(Business Intelligent)ツールだ。調査会社のガートナーの定義では、一口でBIと言っても、レポーティングやアナリスティック&データディスカバリー、統計解析などのさまざまな分野がある。Spotfireはガートナーが導入を推奨しているアナリスティック&データディスカバリーの機能を中心に提供するという。

 日本ティブコソフトウェア APC スポットファイアー・ソリューションズ・コンスタンツ マネージャの及川光博氏は、「定型帳票を出力するレポーティングは、あくまで過去のデータをベースにしており、情報システム部が要件やスキームを定義する必要がある。その点、データは最大公約数的になるので、本当に見たいデータを見られていません。自由分析ではなく、むしろ不自由分析」と指摘する。一方の統計解析は強力なツールだが、使いこなせる人が少ないので、インパクトがまだ小さいという。

日本ティブコソフトウェア APC スポットファイアー・ソリューションズ・コンスタンツ マネージャ 及川光博氏

特許のフィルターでスピーディに分析が可能

 これに対して、Spotfireのアナリスティック&ディスカバリーの特徴は、担当者が能動的に分析を行なえるという点だ。「セルフサービスアナリスティックをコンセプトに、意思決定者が自らデータを扱えるのが、Spotfireの特徴。データの見方を変えることで、会議室でメンバー間でディスカッションすることも可能です」(及川氏)。

 取材では、百貨店を模して、商品や売り上げ、地域などを登録した200万行のデータを取り込んで、データの分析をデモしてもらった。特許技術のフィルターにより、ドラッグ&ドロップで、データが自動的に分類されるのが大きな特徴。日本ティブコソフトウェア スポットファイアー カントリーマネージャー 黒塚明彦氏は、「フィルターでデータの取り込みが自動化できるので、情報システム部が介在しないで済む。エンドユーザーがダイレクトに分析作業に移れます」とアピールする。

日本ティブコソフトウェア スポットファイアー カントリーマネージャー 黒塚明彦氏

 ダッシュボードとして地域や部門ごとの商品の売り上げをグラフ化するだけではなく、たとえば返品率の計算式などをあらかじめ取り込んでおけば、特定の商品や部門の返品率をアドホックに調べることができる。「ダッシュボードは作れますが、これは我々のコアではありません。ツールのユーザーが特定の事象をより深く調べられるのが、大きなメリット」(及川氏)とのことで、原因の解析までディープに踏み込める。単なる“見える化”から、“原因の特定”にまで進めるというわけだ。

 とはいえ、最近ではTabelauやYellowFinなどエンドユーザー向けの新興BIツールがアナリスティック&データディスカバリの機能を提供している。これに対して、Spotfireは、アナリスティック&データディスカバリに加え、統計解析の分野までカバーするのが売りだという。たとえば、さまざまな統計解析のアルゴリズムがあらかじめ組み込まれているほか、ビッグデータ分析でよく用いられているR言語の実行環境まで搭載している。もともとR言語以前に使われていたS言語を手がけていたメンバーがティブコに所属しているため、統計解析を取り込むのは自然の流れだ。黒塚氏は「オープンソースのRを企業の中で使えるように補完している位置づけ。他社に比べて、Rで書いたプログラムのパフォーマンスが全然違います」と語る。

モバイルやクラウド対応、ロケーション分析強化など

 こうしたビッグデータ対応に加え、最新の「Spotfire 6.0」では、買収した企業の製品などを大胆に取り込み、4分野で機能強化を図っている。「BIの導入は終わっているとおっしゃる企業は多いですが、実は固定帳票を作って満足しているレベル。分析ツールを入れていても、診断と一部予測くらいです。われわれは企業の競争優位性を維持・推進すべく、自動化や業務の変革までを見据えています」(及川氏)。

 まずは4大トレンドの1つであるモバイル対応だ。ここでは単にスマートフォンからダッシュボードがチェックできるというだけではなく、買収したPushBIの技術を使って、特定のKPIをモバイルアプリに配信することが可能になる。デバイスの選択肢を増やすことで、今までパワーユーザーに限定されたユーザーの裾野を、現場やオフィスに大きく拡げる位置づけがあるという。また、特定のトピックに対してユーザー同士がディスカッションする掲示板のような機能もあるという。

モバイルデバイス向けにKPIが配信される

 ロケーションアナリスティックも強化させた。Spotfireではクラウドベースの地図に住所を含むさまざまなデータをマッピングする機能を持っているが、新バージョンでは同一地図上に複数レイヤーを交えた分析が可能になった。「自社製品と他社製品の売り上げをレイヤーで比較しながら、1枚の地図で分析できます」(及川氏)。

位置情報とデータをマッピングするローケーションアナリスティック

 また、データサイエンティスト向けのイベントアナリスティックでは、パターンを発見し、データを継続的にモニタリングするモデルを実装。もともとティブコが強みとしていたCEP(複合イベントプロセッシング)をベースに、リアルタイムなイベント処理を実現する。たとえば、製造業などで正常挙動とライブデータの比較を行ない、正常モデルを逸脱した場合に、原因を分析するといった用途に用いられる。Spotfire 6.0ではアドオンバンドルという形でモジュールが提供され、高いレベルの分析を試すことができる。

 さらにクラウド対応にも本格的に対応した。これまでSpotfireはオンプレミスでの導入のみサポートしていたが、6.0からティブコ自体がSpotfireをサービスとして提供する。具体的には、Spotfireを搭載したAmazon EC2のインスタンスをプライベートクラウドとして提供するという。

 日本では製薬業界を中心に実績を持っており、半導体、素材、化学などの製造業の顧客を増やしていく予定だ。業種に精通したSIerやビジネスコンサルタントなどと提携を積極的に進めており、経営に活かすBIとして展開していくという。

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