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石井英男の『研究室研究所』

この研究者・開発者がスゴイ!――大野修一氏

Gのレコンギスタの舞台“宇宙エレベーター”に惚れ込んだ男

2014年06月11日 11時00分更新

文● 石井英男

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あの富野監督を鞍替えさせた! 宇宙エレベーターの魅力

 今年はガンダム35周年であり、さまざまな記念企画が進められているが、そのなかでも目玉といえるのが、ガンダムの産みの親である富野由悠季監督が手がける新作ガンダム『Gのレコンギスタ

 富野監督がガンダムシリーズの制作に携わるのは、本格的な長編アニメシリーズとしては、『∀ガンダム』以来じつに15年ぶり。この新作は、宇宙エレベーターを舞台としており、主人公は、宇宙エレベーターを守るパイロットの候補生という設定なのだ。

 富野監督は、数年前から宇宙エレベーターに関心を持っており、宇宙エレベーター協会が年1回開催している宇宙エレベーター学会のパネルディスカッションへの参加経験もある。そこで、富野監督と宇宙エレベーターの関わりについても訊いてみた。

富野由悠季監督はロケットから宇宙エレベーターに鞍替えしたという。その結果生まれたのが新作ガンダム『Gのレコンギスタ』だ

―― 富野監督が15年ぶりにガンダムの新作を手がけますが、その舞台が宇宙エレベーターですよね。

大野 「はい、この間サンライズで富野監督と対談させていただいたところです」

―― 富野監督は、結構前から宇宙エレベーター協会に参加してますよね。

大野 「以前、“富野監督が宇宙エレベーターの話を訊きに行く”という内容のドキュメンタリー番組の制作をお手伝いすることになり、宇宙エレベーター技術競技会にお越しいただいたのがきっかけです。

 最初は『ロケットじゃないとダメだよ。だいたい、宇宙エレベーターなんて1本線を描いて終わりだよ』と仰っていたのですが、カンファレンスなどに参加いただくうちに、『鞍替えした』と。

『Gのレコンギスタ』は、施設自体が生活圏になるほど巨大な宇宙エレベーターが舞台だ(提供:Space Elevator Visualization Group)

 富野監督は長年、宇宙への大量輸送機関が必要だと考えていらっしゃったのですが、肝心のロケットがガンダムの放送から30年以上経っているにもかかわらず、進歩が遅いことに業を煮やしているところに、宇宙エレベーターの話を聞いて興味が沸いたそうです。

 ガンダムの新作は、規模の大きな宇宙エレベーターを舞台としており、もはや宇宙エレベーターそのものが1つの世界になっています。富野監督とはディスカッションをしていますが、我々協会は最初のきっかけに過ぎず、後は第一人者の方々や大林組などに富野監督ご自身が直接出向いて調べ上げた結果なのです」

会社を辞めて宇宙エレベーター協会に専念

 宇宙エレベーター協会が任意団体として活動を開始したのは2008年。そして翌年に一般社団法人となった。しかし、大野会長を含む主要メンバーは、2006年頃から活動を開始していたという。そのきっかけはなんだったのだろうか。

―― そもそも協会を設立したきっかけはなんですか?

大野 「NASAのエドワード博士のレポートが2003年に出て、宇宙エレベーターが一気に現実味を帯び始めたた結果、海外では研究を始める人たちが増えました。そこで、宇宙産業に携わっているアメリカの企業を訪ねて、『私も宇宙エレベーターをやりたいんだ』と言ったら、『まあ、止めとけ』と言われてしまい(笑)。

 で、日本に帰ってきて見渡してみると、まだ誰もやっていないのですね。試しにJAXAに話を聴きに行ったら、笑われちゃうわけです。『それは難しい、無理だ。ロケットだって大変なのに』と。でも、そんなことはないはずだと仲間内でエイヤ!と立ち上げたのがすべてのスタートです」

―― そもそも、なぜ宇宙エレベーターでここまで突っ走ることになったのでしょうか? 例えば、小さい頃どういうものを見たのだろうとか。

大野 「全然普通ですよ。中学の頃がサンライズのロボットアニメ全盛時代で、SFにハマってハヤカワSF文庫とか一所懸命読んでいましたね。ただ、日本では正直に言って、相当優秀な大学に行かない限り、航空宇宙業界にはなかなか入れない。僕は、そんなに頭良くないですから、最終的には大学を出てIT系の仕事を始めました。

「今は宇宙エレベーター協会専従です。どこまで行けるかわかりませんが、前を向いて走っていきたいですね」(大野さん)

 そして“オタクというほどではないがSF好き”という立場でいたのですが、2003年の宇宙エレベーターに関するレポートが出たときに協会を作ってみたところ……アーサー・C・クラークが『楽園の泉』を書いた頃に航空宇宙業界に入った方々が、ちょうどリタイアの時期だったのですね。

 そしてJAXAの名誉教授や、『僕も昔、テザー衛星の論文を書いたことがあるんだよ』と仰る方々が、『おっ、日本でも宇宙エレベーターやるのか!』と、協会に入っていただくなどの幸運が重なって、なんとなく体裁が出来上がりました。ですから、特に強い意志を持って……というわけではないのです」

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―― IT系のお仕事とは?

大野 「大学の情報処理センターでインフラ系を。BクラスのIPアドレスをもらいに行くところから始まり、ジョブスがアップルを追い出されてNeXTを作ったというので、大学で250台入れて、僕がずっと管理していました。最後のほうは財務システムとかもやっていましたね。

 そして、仲間が独立するというので大学を辞したのですが、そのタイミングで宇宙エレベーター協会も始めたところ、こっちのほうが面白くなってしまい、そのうち仲間から『ITベンチャーと宇宙エレベーター、どちらかを選べ』と言われて、『ごめん、俺宇宙エレベーターやる』とわがままを。

 その後、業務委託で大学の仕事などを請けていましたが、今年4月からは宇宙エレベーター協会一本になりました。まだ、やっていけるかわからないですよ。ただ、もうこのままでは専従の人間がいないと無理な規模になってしまいましたので、行けるところまで走っていきたいと思います」

―― 今日はありがとうございました。

今年も記録に挑む!
SPEC2014第6回宇宙エレベーターチャレンジ実施企画・説明会

 昨年1200mを記録した宇宙エレベーターチャレンジが今年も8月6日~9日(予備日10日)に開催予定。その参加者ミーティングが6月14日(土)、品川区東五反田の知っ得シニア情報館1階にて行なわれる。参加は自由なので、興味ある人は足を運んでみてはいかがだろう。

参加者ミーティング
日時:6月14日(土)13:15~15:15(開場:13:00)
場所:知っ得シニア情報館1階
内容:SPEC2014レギュレーション概要説明、チーム奥澤によるクライマー解説 他
対象:SPEC2014ご参加を検討されている方々、メディア関係者
参加:当日どなたでもご参加いただけます


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