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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第44回

セルフパブリッシングの未来(4)

セルフパブリッシングは集まって強くなる――群雛・鷹野凌さんの場合

2014年06月13日 18時00分更新

文● まつもとあつし

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アマゾンに依存しない多様な作品流通の場を
いずれセルフパブリッシングにも厳しい世界が……

―― なるほど。では最後にセルフパブリッシングはこの後どうなっていくか、あるいはどうあるべきか、という鷹野さんの考えを教えてください。

鷹野 「映像の世界でいえば、YouTubeやニコニコ動画が登場して、作品の発表のあり方が一変しましたよね。それと同じような熱をいま凄く感じています。

 iBooks、Google Playに加え、Koboのライティングライフも今年中に始まるということですし、いわゆる“黒船4兄弟”で直接作品が発表できる環境が整います。そこでは商業出版物とセルフパブリッシング作品が同列に並ぶわけです。

 国内サービスも当然追随していくはずですし、今回話に出てきたようなセルフパブリッシングをサポートするサービスもたくさんあるわけですから、これらを利用しない手はないはずです。

 Kindle、KDPの存在抜きでのセルフパブリッシングは考えられにくい状況になっているのは事実だと思います。ただ、だからといって自らを“キンドル作家”“KDP作家”とは呼んで欲しくないなと。

 自費出版して○○書店に本が並んだからといって、自分のことを“○○書店作家”とは呼ばないですよね(笑)。

 つまり、Kindle、KDPだけに依存するのではない形で、セルフパブリッシングを考えて行なって欲しいということなんです。アマゾンは“顧客優先”というポリシーのもと、これまでもサプライヤーに対して、厳しい条件を求めることで成長を続けてきました。

 その彼らに“依存”し、結果として寡占を許してしまっては、いずれセルフパブリッシングを行なう作家に対しても、厳しい世界が待ち受けることになります」

―― なるほど、群雛の販売先が多様なのもそういった思いが背景にあるわけですね。

鷹野 「そうですね。群雛に参加するとBCCKSのレポート機能で、そういった販売先での売上レポートが共有され、印税のお支払いも行なわれます。作品を書くことに専念されている作家、作家志望の方にもこうした群雛や独立作家同盟の活動を通じて、そういった流通の大切さも知ってもらおうと思っています」

 漫画誌やファッション誌など雑誌の電子化が相次いでいる。本連載でも、電子雑誌Airを取材したが、セルフパブリッシング作品を集め、発表することにある種特化した群雛の存在はユニークだ。

群雛の立ち位置は、これまであまり例がなかった“集団での電子パブリッシング”といえる

 これまでも、同人誌を電子的に販売しようという取り組みは行なわれてきたが、“場の熱量”が電子では演出できず、なかなか販売は厳しいというのが現状だった。群雛は、ある種そこを割り切り、イベントなどでサークル同士互いの同人誌を購入するようなイメージとも言えるだろう。

 それでも、電子雑誌という1つのパッケージ、定期刊行、また、オンライン上での編集やアドバイスという“機能”が、作家を目指す人に与えるメリットは大きいはずだ。

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