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ビッグデータ活用が関西の企業を改革する—「IBM Leaders Forum 2014 関西」

2014年05月29日 10時00分更新

文● 大河原克行

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「スマートな時代の新たな価値創出」パネルディスカッション

 続いて、「スマートな時代の新たな価値創出」をテーマに行なわれたパネルディスカッションでは、塩野義製薬の手代木功社長、日立造船の古川実会長兼CEO、日本IBMの薮下真平取締役執行役員がパネリストとして参加。アナウンサーの渡辺真理氏の進行で討論が行なわれた。

「スマートな時代の新たな価値創出」をテーマに行なわれたパネルディスカッション

モデレータを務めたアナウンサーの渡辺真理氏

 塩野義製薬の手代木功社長は、「製薬会社にとって新たな価値とは、これまで治療手段がなかった疾病をどう治すかということ。そのための薬を作る必要があるが、今でとは異なるアプローチが必須となっている。延命のための薬も必要だが、今や30代、40代といった働き盛りの方々に会社で働いてもらう、いわば健康寿命を伸ばす薬の開発も必要である。

塩野義製薬の手代木功社長

 アルツハイマーの発症を1年遅らせると、1兆円もの生産性があがるという試算もある。だが、ひとつの新薬作りが成功する確率は3万分の1。そして、1200億円ものコストがかかる。確率は下がり、コストは上昇している。これを解決するには医師とのコラボレーションが必要である。

 だが、日本では、電子カルテの情報が活用されていない。疾患情報をもとに、創薬のための情報を得ることができないだろうか。それが創薬の確率をあげるヒントになる。ただ、人間の身体にはわからないこともたくさんある。情報は重要だが、最終的に判断するのは人間であることには変わりがない」とした。

 また、日立造船の古川実会長兼CEOは、「日立造船では、タービンで電気を起こすことができるゴミ焼却炉を供給している。国内1189カ所のうち、300カ所が発電型ゴミ焼却炉であり、すでに180万kWの発電を担っている。これは原子力発電所1.5基分になり、24時間発電できるというメリットもある。

日立造船の古川実会長兼CEO

 一方で、プラスチックは分別しすぎても、処理コストが高まるだけという課題もある。分別するのではなく、一緒にして、燃やした方がエネルギーになる。全世界のゴミの量は105億トンだが、2050年には234億トンにまで増えることになる。

 ゴミはエネルギーになる。今はこうした事業に力を注いでいるが、造船専業から生き残るためには、この選択しかなかった」とし、陸にあがった日立造船としての現在のボジションを紹介。

 「これからは、ビッグデータを活用していく必要がある。20〜25カ所の焼却炉を遠隔映像監視しているが、センサーをつければ経年劣化への対応や、効率的な保守活用が可能になる。メカには強いが、ソフト解析に強い技術者が少ないのが問題である」などと述べた。

 日本IBMの薮下真平取締役執行役員は、「ITは人間の省力化が大きな役割だったが、これからは新たな知恵を引き出すことがITの役割になる。創薬の成功確率を1万分の1にすることや、焼却炉の運用を長期的に安価に行なうことにも、ITとネットワークの活用で可能になるだろう」とした。

日本IBMの薮下真平取締役執行役員

 「今回のイベントでは、料理を考えるコンピュータを展示している。シェフが、鶏肉をメキシコ風で調理したいと入力すると、5000件のレシピを考え、そのうち、おいしさやサプライズなどの条件をもとに、上位20個のレシピを提案する。人は、何かを判断するときにはいいヒントが欲しい。

 米国では、150万人の癌患者の症例や、2万ページの医学書の情報をインプットして、コンピュータに患者の状況を入れると、そこから医師に最適と思われる処方を提案する。最終的に判断するのは医師だが、自分の経験の範囲を超えた提案が患者にできるようになる。

 このように、価値を増大することに、コンピュータを活用できるようになる。経営者にとって、最大の関心事は技術である。ITは10年で100倍も処理能力が向上している。こうした技術を活用してほしい。日本IBMは、世界で最高の技術と製品を日本に提供する」とした。

Watosonの技術を使って、コンピュータが最適な食材を選ぶ

Watasonがレシピを導き出したクロアチア風シナモンジュース。ヒルトン大阪のシェフが作り、参加者に振る舞った

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