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真のベストオブブリードを実現する工夫と体制を聞く

統合型システムの先駆者「Vblock」が今でも最強である理由

2014年05月27日 14時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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安定し成長し続けるVblockの秘密

 競合となるHPやIBMの統合型インフラストラクチャシステムに比べ、VblockはVMware、シスコ、EMCなど異なる製品を組み合わせた“ベストオブブリード型”の製品だ。こうなると、相互運用性は確保されているのか? 最新技術の導入は遅いのか? サポートはたらい回しにされないか? などさまざまな不安が出てくる。

 こうした不安を解消すべく、VCEでは1500名にもおよぶエンジニア、数十億ドルというR&D予算を投じて、Vblockを1つの製品として「設計」「製造」「管理」「サポート」「維持」しているという。

Vblockが提供する5つの価値

 たとえば「設計(エンジニアリング)」の観点では、サーバーやストレージ、ネットワーク、仮想化などの統合ポイントを洗い出し、アプリケーションのワークロードから要素をチューニングし、すべてがきっちり動くようにしている。「各製品の限界を理解し、バランスのとれたものを作るのが、設計の大きなポイントだ。それぞれのコンポーネントの性能をフルに引き出しつつ、最適化された環境を提供できる」(アーブス氏)。

 「製造」に関しては、大規模な設備を米国とEUの2カ所に設置。300を超えるコンポーネントの物理構築、60を超える統合ポイント、約30のコード要素を持つ論理構築、各種のテストを行なっている。これにより、発注から45日以内に納品を完了し、ユーザーはそこから48時間以内に導入できるという。また、VCE VISION Intelligent Operationsを使うことで、さまざまなツールから統合的に「管理」できるほか、「サポート」もVCEで一元化。問い合わせの70%を各ベンダーへのエスカレーションなしで行なっている。

 そして、リファレンスアーキテクチャとの違いでもっとも大きいのは、製品の継続的に「維持」するための体制だという。「各製品のロードマップを確認して製品をメンテナンスしている。たとえば、Vblockは変更ポイントが約600あり、ファームウェアやソフトウェアのマイナーリリース、パッチなどなんらかの更新が行なわれる。これらを積極的にテスト・検証している」とのこと。テストや検証作業を自動化し、「リリースコンパチビリティマトリクス」というリリースの適合表も用意。一部がアップデートされても、きちんと動作するという。

 また、新製品や新技術の取り込みも速い。「EMCは昨年、新しいVNXをリリースしたが、その30日後にはそのVNXを取り込んだVCEをリリースした。今週、リリースされたNexus 9000を取り込んだACI(Application Centric Infrastructure)レディのVblockもいち早く提供する」(アーブス氏)とのことで、スピード感も大きな魅力。ユーザーに代わって、検証まで行なうので、新しい機能や技術を導入する際のリスクが低いわけだ。

EMC WORLD 2014で展示されたVblockのデモ機。顧客への説明のために前面にタッチパネルディスプレイを埋め込んでいる

 とはいえ、Vblockのような統合型システムは、その完成度の高さゆえ、SIerの敵になる可能性もある。これに対して、アーブス氏は「SIerにとって、ケーブリングやラッキング、リリース管理はもはや収益を生まない作業になっている。でも、この部分をVblockが請け負っているので、SIerは喜んでくれている。SIerは、その時間をマージンに高いビジネスに充てられるからだ」とその意見を一蹴。加えて、統合型でありながら、SIの余地を残しているのもVblockの特徴。「Vblockは標準化が徹底している一方で、エンジニアから見た柔軟性も確保している。構成変更のための“ノブ”や“レバー”がついている。これを使って、異なるアプリケーションにマッチさせることができる」(アーブス氏)。特に、北米ではエンドユーザー自身が、構成変更や運用効率化に手を入れたがるので、こうした取り組みは必須だという。

プライベートクラウドやVDIに積極的に採用

 Vblockの用途として、プライベートクラウド用の仮想化インフラ、SAPやマイクロソフトのビジネスアプリケーション、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)など多岐に渡る。実際に導入されている事例としては、プライベートクラウドとしての利用が挙げられる。

 アーブス氏が例として挙げたMOLINA HEALTHCAREという医療機関は、保険請求プロセスの突発的な集中に対応するため、Vblock 300/700を導入した。「ピークのスパイクに対応するためパブリッククラウドの利用を検討したが、ヘルスケアはセキュリティやコンプライアンスの要件が厳しかった。そこで、Vblockでプライベートクラウドを構築し、コンプライアンスの要件を満たしつつ、同一システムに別のアプリケーションの動作もサポートできた」(アーブス氏)。

MOLINA HEALTHCAREではVblovkでセキュアなプライベートクラウドを構築

 また、TYLER独立学区はVblock 300をよって、2万台を超えるPCをVMware ViewのVDIに移行した。さらに、金融機関がPCIのコンプライアンスの要件を満たすためにVblockを導入すると行った例が挙げられるという。

 サービスプロバイダーがプライベートクラウドのインフラを構築するのに導入する例も増えている。この場合は、ストレージをマルチテナンシーで共用しつつ、物理サーバーや仮想マシンを専有する構成が多いという。北米以外では、こうしたサービスプロバイダーへの導入を積極的に進めていく予定。アーブス氏は「よいサービスプロバイダーはTCOをきちんと管理しているので、導入のコストメリットを理解していただけるはず」と語る。

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