イメージセンサー、VAIO、ウォークマン──ソニーは小型化が得意の会社だ。そのソニーがいま、「会社の小型化」にも取り組んでいる。
同社代表取締役の平井一夫社長は22日、2014年の経営方針を説明した。PC事業の収束とテレビ事業の子会社化について触れ、「販売会社および本社の構造改革を2014年度中に完遂する」とした。
平井社長がソニーのCEOに就任したのは2012年4月。ハワード・ストリンガー氏の後任として、7年ぶりの社長交代であった。当時のソニーは最終赤字4566億円という状況。逆風の中、平井社長は「デジタルイメージング」(カメラ、センサー技術など)、「ゲーム」「モバイル」(携帯電話、パソコン、タブレットなど)といったコア事業の強化を明言し、テレビ事業の立て直しを宣言した。
「ソニーが変わるのは今しかない」(平井社長、2012年社長就任時の経営方針説明会にて)
その言葉通り、平井社長はソニーの再建に奔走した。2012年度の連結業績は430億円の黒字に転換し、ソニーの黒字化はまさに5年ぶり。一方で、エレクトロニクス部門は1344億円の赤字。課題も残った。
ソニーの変化は商品のかたちでも徐々に表れていた。象徴的なのは2013年2月に発売されたハイエンドスマホ「Xperia Z」。発売されるやいなや、世界中で好評を博した。報道によると、フランスのオンラインストア販売では1日で3カ月ぶんの販売を上回ったという。
Xperiaシリーズは2013年度4〜6月だけで960万台を販売。2013年第1四半期決算の増収増益の原動力を担った。さらに同期には2010年第1四半期以来、12四半期ぶりにテレビ事業の黒字化も成し遂げた。
「世界中の現場を訪問し、あらゆる社員と意見交換した。ソニーが持つ将来の可能性を再確認できた」(平井社長、2013年度経営方針説明会にて)
平井社長はテレビ事業とエレクトロニクス事業の黒字化を、2013年度の必達目標とすると約束。その滑り出しは順調に見えた。
確かに、2013年度はソニーから意欲的な製品が次々と発表・リリースされた年でもあった。スマホ用外付けレンズ「QX」シリーズ、世界初の35mmフルサイズセンサー搭載ミラーレスカメラ「α7」、同じく世界初のラケット装着型センサー「スマートテニスセンサー」、部屋を別空間に変える超単焦点プロジェクターを使ったコンセプト「ライフスペースUX」、そして待望の後続機「プレイステーション4」。
「リスクを取り、感動を与えたい。心に訴えるものを作りたい。『Wow』の力を信じている」(平井社長、2014インターナショナルCESにて)
製品を取材した多くの報道陣が「最近のソニーは面白い」「昔のソニーが帰ってきた」などと絶賛した。しかし、それでも、経営再建の道のりは険しい。2013年通期の決算は1283億円の赤字。赤字要因のVAIOは事業を売却し、10年連続の通期赤字に陥ったテレビ事業は分社化が決まったのは既報の通りだ。
2014年度(2015年3月期)は500億円の赤字になる見通し。2015年度は4000億円規模の連結営業利益を目指すという。ソニーが変わりつつあることは確かだが、事業縮小の先に4000億もの莫大な営業利益を生み出せるかどうか。平井社長の挑戦は、まだ終わりの見えない試練と向き合い続けている。