HP独自ディストリビューションも提供!Cloud Foundry対応も発表
OpenStackをクラウド戦略の中心に据えた「HP Helion」の覚悟
2014年05月22日 06時00分更新
無償と有償の2つの独自ディストリビューションを提供
今回発表された具体的な施策としては、まず無償版の「HP Helion OpenStack Community」と有償版の「HP Helion OpenStack」という2つのHP独自のOpenStackディストリビューションが提供される。「HPは数千、数万台規模のクラウドを運営している。ここでの実績のあるソースコードを、OpenStackディストリビューションとして提供する」(真壁氏)。
無償版のHP Helion OpenStack Communityは、試用や検証、小規模環境(30サーバー程度)に適するディストリビューション。最新の“Icehouse”をベースにしており、コミュニティで開発した機能を6週間ごとに取り入れリリースを進める。「OpenStack on OpenStack」と呼ばれる“Triple0”の機能によって、容易なリソースの配置を実現。また、DebianベースのHP Linuxが同梱されているのもポイントで、管理やストレージ、ネットワークなどのOpenStack用のノードで利用される。プレビュー版はすでに公開されており、正式版は2014年6月に提供される予定。無償で利用できるが、別途で有償サポートも提供されるという。
有償版のHP Helion OpenStackは、HPがパブリッククラウドで運用してきた実績とノウハウをHP Helion OpenStack Communityに付加したディストリビューション。数千・数万規模の物理サーバーを超えるような拡張性や可用性を誇るほか、マルチハイパーバイザーやさまざまな運用管理機能が付与される。Enterprise版とService Provider版の2つのエディションが用意されており、プレビュー版が6月、正式版が8月に提供される予定となっている。
これらのディストリビューションは、もちろんマルチベンダー対応だが、HPハードウェアへの最適化も進める。HPサーバーの管理チップ「iLO」や電源管理をOpenStackと連動させたり、設定やQoSなどを最適化する3PAR用のプラグインを提供したり、HP SDN Controllerと連携したSDNとの連携などが実現される予定となっており、今後登場する製品に反映されることになる。
プロフェッショナルサービスとCloud FoundryのPaaSも
また、パブリッククラウドを運用してきた実績を元に、戦略立案、アプリケーション移行、設計、構築、運用、教育、アセスメントなどを手がけるプロフェッショナルサービを新たに提供する。
サービス面では、HP Helion OpenStackをベースにしたパブリック/マネージドクラウドをホストするデータセンターを大幅拡充する計画も発表された。現状では北米のみの展開になっているが、今後18ヶ月で世界20以上の地域で展開する予定。「レイテンシの問題から、やはり日本にデータセンターが欲しいという声は大きかった」(真壁氏)とのことで、東京での展開も予定されている。
さらに2014年後半には、Cloud FoundryをベースにしたPaaSである「HP Helion Development Platform」の提供を予定する。Java、.NET、Python、Ruby、PHP、Node.jsなどの言語、MySQLやRabbitMQ、MemcachedなどのOSSなどをサポートし、可用性と拡張性の高いアプリケーションの開発環境を提供するという。「HPはOpenStackとのインテグレーション、すでにある開発ツールやテストツールの強みもある」(真壁氏)とのことで、IBMやPivotalなどCloud Foundryを担ぐベンダーとの差別化も図っていく。
エンタープライズベンダーがクラウドに本腰
「HPの総力を結集する」と謳われたHP Helion。クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルなど4大トレンドを前提としたいわゆる“第3のプラットフォーム”への移行は、大きなテーマではあり、エンタープライズベンダーのこうした戦略は当然の帰結ともいえる。とはいえ、Amazon Web Servicesなどのパブリッククラウド勢が既存のITベンダーの牙城であるエンタープライズ領域にまで侵食しつつある市場動向がその背景にあるのも間違いない。