「本の未来」はどこにあるのでしょうか? サービス開始初日に1万人が登録、現在もクリエイターが次々に参加してさまざまな表現を始めている「note」。単行本のヒットメーカーから定額メディア「cakes」に続いて、この新しい個人向けメディアプラットフォームを作った加藤貞顕氏に、もと上司(ただし斜め上)の角川アスキー総研の遠藤諭が聞きました。
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コンテンツがグループ化するとどうなるか?
―― 「cakes」をはじめたときに「note」の構想があったとすると、かなり計画的だと思うんだけど、それじゃ、今後はどう発展していくんですか?
加藤貞顕(以下、加藤) 今後の話をすると、コンテンツをグループ化する「マガジン」という機能をつけます。これはなかなか面白いので、遠藤さんとお話がしたかったんです。
―― グループ化で、オリジナルのコンテンツが単体で持っていた以上の魅力が生じるということですよね。雑誌の編集を仕事にしてきた身としては気になりますが、紙における編集というのは、Webではインタフェースで実現される気がします。つまり、システム的なことがとても重要ですよね。
たとえば、Webというといかにも自由にできるように見えて、実際はかなりの制約がありました。毎回HTMLをコーディングしているわけにはいかないから、Webコンテンツというと何かとCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)と言われた時代があるじゃないですか。で、編集者のワークフローとか、サイトのどこに出すか、まさにコンテンツ管理という話になります。でもそれって組織だって予定されたコンテンツを作って予定された形でアップロードする前提ですよね。もっとダイナミックにやりたい場合にはCMSっていう言葉から離れないとだめだと思ってました。
加藤 これまでのCMSは、率直に言っていまいちなものでした。その反作用として、こういうことをやっている面はありますね。
―― コンテンツをグループ化して「マガジン」と呼ぶというのは、本からある意味シームレスに雑誌に行くようになるという感じですか?
加藤 その2つは、いずれ融合というのかな、グラデーションでつながると思います。遠藤さんの記事は相変わらず個人の記事としてバラバラにあるんですが、そのうちのいくつかが僕のマガジンにあったり、他のマガジンに入っていたりするというイメージです。
―― なるほど、コンテンツを入れる器はいろいろあって、重複していたり、同居していたりしていいわけですか?
加藤 もちろん有りです。他人のものは売れないですが、自分用に「Pen」と「non-no」と「BRUTUS」の家具特集をまとめちゃったりしても良いわけです。
―― なるほど。その「マガジン」が、そのまま紙の雑誌の代替ではないわけだけど、束になったコンテンツの魅力は大きいですよね。
ただ、いま聞いたグループ化というアイデアを聞くと、逆にネットの柔軟性を削ぐというか、旗印を掲げて船出して世の中に何かを言っていくしくみがあったらいいとも思うんですよ。たとえば、雑誌なら“雑誌名”を付けるみたいなことが重要だったわけですよね。ネットって総じて柔軟になっていき、すべてがバラけていく性質があって、それらはもちろんほとんどの場合良い方向に働いているから、異論をとなえるつもりはないんですけれど。
加藤 それはありますね。雑誌はその意味では、判型とデザインでそういうことを表現しているんですよね。
―― デザインというと、デジタルではアイコンとかが重要となりますね。Appleはコーポレートフォントとかマークをジョブズがものすごく重要視してきたけど、あれってAppleにとって中世騎士団の盾に飾られた紋みたいなものですね。だからAppleの企業活動というのは、雑誌的な運動っぽいところがある。僕は「雑誌」という言葉を聞くと、そういうグループになって活動しているイメージを求めてしまいます。Webでもそういうことを気合でできそうだけど、うまくそれがシステムになるといいですねぇ。
【加藤さんの登壇するセミナーを開催します】
加藤貞顕さん、そしてゲストに橘川幸夫さんをお迎えして、「note」について、出版の未来について語っていただくセミナーを開催します。ぜひご参加ください。
講師: 加藤貞顕(株式会社ピースオブケイク 代表取締役CEO)
ゲスト: 橘川幸夫(デジタルメディア研究所 所長/阿佐ヶ谷アニメストリート商店会長)
日時: 2014年5月20日(火)
受付開始 18:00/開演 18:30/終了予定 20:30
会場: 角川本社ビル 2階ホール
東京都千代田区富士見2-13-3
参加費: 5,000円
主催: 株式会社角川アスキー総合研究所
詳細・お申し込み:http://peatix.com/event/36169/