Financial Timesの報道によると、アップルはBeats Electronicsのヘッドホンとストリーミング・ミュージック部門の買収を成立させようとしており、これがうまく行けばアップルにとって最大のM&Aとなる。
言うまでもないが、この買収はアップルと同社のiTunes、iTunes Radioといった音楽事業に莫大な影響を与えることになる。同時に、同社のモバイル端末に同封される白いイヤホン「EarPods」の可能性も広がるはずだ。
まずiTunes Radioは、Beatsが今年始めたばかりのストリーミング・サービスの恩恵を受けるだろう。我々がBeats Musicをレビューした際には、このソフトはまるで人間のDJが「ユーザの馴染みのある楽曲から全く新しい楽曲まで手を引いて案内してくれているよう」だとレポートした。今のところ、我々はBeats Musicがストリーミング・サービスとして最も優れていると感じていたが、アップルも同じように思ったのかもしれない。そういえばアップルは、iOS 8のリリースに合わせて同社のiTunesを改善するのではないかと期待されているのだ。
ReadWriteはつい最近、アップルが酸素濃度や脈拍などの生体情報を計測する新たなヘッドホンを発売する可能性について言及した記事を公開している。その記事の通り、研究者たちはカナル型イヤホンから心臓血管に関するリスクを把握して医師に通知するコンセプトの「科学的実現性」を証明している。ただ「健康指向のカナル型イヤホンのソリューションは、特に一般向けとして成功した例がない」。それは、フィットネス端末にはファッション性が必要であり、「自分はエクササイズによって自己管理を行っているというメッセージを周囲に伝えるためのツール」として成立する必要があるからだ。
アップルは通常、小さな会社を密かに買収することが多い。過去18か月間の間では、実に24にものぼる会社を買収している。しかしBeatsを巡る取引はこれらのスケールをはるかに上回っており、近年シリコンバレーで見られる10億ドル規模の大型案件の仲間入りを果たすことになる。GoogleはNest Labsを32億ドルで買収しており、フェイスブックもWhatsAppの買収に総額約19億ドルを支払っている。
Beatsの音楽ストリーミング・サービスはAppStoreでも好調で、競合のSpotify、Pandora、SoundCloudを上回っている。しかしBusiness Insiderのジェイ・ヤローが指摘するように、Beatsの現在のハードウェアはひどいもので、そのソフトウェアもまだ発展途上にあるようだ。グーグル検索の予測変換もそれを物語っている。
しかしアップルの重役ならだれもが、音楽こそが今もこれからも同社のDNAの一部であると断言するはずだ。iTunesを筆頭とするアップルのあらゆる音楽サービス(ヘッドホン、ストリーミング・ソフトウェア、その他)は常に中心的な課題として扱われる。Beatsも近年ではかなりの成功を収めており、自身のヘッドホンやソフトウェア・サービスを若い世代に浸透させている。この影響力はアップルにとって魅力的であり、32億ドルという金額も十分に正当化できるだろう。アップルが自由にできるお金が1000億ドルはあると考えれば、余裕といってもいいかもしれない。
なお、Beatsの共同設立者で音楽プロデューサーのジミー・イオヴィンとドクター・ドレは、もともとアップルが端末に同封しているイヤホンのクオリティーに嫌気が差して、Beats Electronicsを2008年に起業したのだという。
※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら。