産業技術総合研究所(産総研)は、有機薄膜太陽電池の結晶生成方法の改良により、光電変換効率を従来の2.2倍にする薄膜製造方法を開発した。
有機薄膜太陽電池では、正電荷を運ぶドナー材料と負電荷を運ぶアクセプター材料がランダムに混ざったバルクヘテロジャンクションと呼ばれる構造が主流だが、ランダムな構造のため発電層を構成する各材料の結晶構造や混ざり方を制御することが難しく発電効率の向上の妨げになっていた。
産総研の研究グループは、結晶成長手法を有機薄膜太陽電池の作製手法である共蒸着法に初めて適用。独自の工夫として材料をテンプレート層を形成した上にドナー材料とアクセプター材料を共蒸着させることで、材料の混ざり方や結晶性を制御することに成功した。
電荷が効率よく流れる理想的な構造によって効率の良い電荷生成、電荷取り出しが実現、光電変換効率が従来の1.85%から4.15%と、約2.2倍に向上したことを実証した。
有機薄膜太陽電池はプラスチックフィルムの上に形成できることからフレキシブルなデバイスに使用でき、また製造コストを大幅に低減できるなどの利点があるため次世代太陽電池として各所で研究開発が進められているが、シリコン結晶系太陽電池に比べると光電変換効率が低いのが問題とされていた。今回実現した変換効率4.15%でも最新のシリコン結晶系太陽電池の変換効率(20%を超える)にはまだまだ及ばないが、製造コストの低さからくる利点をさらに活かせるものになった。
産総研では、今後さまざまな有機半導体材料に適用することでさらなる高効率化に向け研究開発を進めるほか、これまで有機薄膜太陽電池で用いてきた高分子系材料のほか、発電層の構造を制御できることで低分子系材料を用いた高性能有機薄膜太陽電池の可能性も探ることができるようになったとしている。