ブラシレスジンバルを手持ちで使ってみる。非常に滑らかに水平を保つ
安定度が段違い! ブラシレスジンバルの威力
ムービーカムの世界では、カウンターウェイトを用いてヤジロベエ的な仕組みで揺れを抑える“ステディカム”が普及していて、カメラマンが走りながらでも安定した映像を撮影できる。コンパクトデジカメなどで利用できるハンディーサイズの製品も発売されているので店頭などで見かけたことがある人も多いはず。
加速度センサーとモーターで安定を図るアクティブスタビライザーは民生用としてはあまり見かけないが、映画撮影などに使うプロユース機材としてはかなり使われ始めているようだ。昨年話題となった「MōVI」「BeSteady」あたりが有名なところだが、業務用なのでとても高い。
なお、クアッドコプター用カメラスタビライザーの世界では、一昨年あたりからサーボの代わりにブラシレスモーターを用いる“ブラシレスジンバル”が登場して、さらに安定化するようになっている。
ブラシレスモーターは一般的なDCモーターのようなブラシ(回転軸に接触して回転ごとにプラスマイナスが変わる電極)がない代わりに、電子的な回路で電流の流れを変えて回るモーター。寿命が長くエネルギー効率も高めなのが特長。なにより半導体回路で制御するので、回転速度を細かく制御できるのが大きい。
クアッドコプターの多くがブラシレスモーターを使っているのはこのためだが、DCモーターにはない特徴として、回転速度だけでなくある一定の角度のところで止めるといったサーボのような制御もできる。ちなみに最近普及が進む3DプリンターでXYZ軸を細かく制御するのはステッピングモーターといって、回転数だけでなく角度まで指定でき、ブラシレスモーターと同じような仕組みを用いている。
プロペラを毎秒数百回転で回して空を飛ばせるくらいの回転速度を持つブラシレスモーターなのだから、恐ろしく応答速度が速い。これをサーボ代わりにX軸/Y軸に用いたブラシレスジンバルはけっこうな勢いよく振り回しても不気味なほど滑らかに動きに追従する。さらにサーボではかなり気になるジジジッという動作音もブラシレスモーターではほとんどない。
単体では水平を取るという単純な動作のみだが、コントローラーにはラジコン受信機からの信号の入力端子もあり、プロポ操作によってピッチの基準位置を変えることもできる。マルチコプター空撮などでカメラの俯角を変え、低空では水平に近く、上空からは見下ろした画像を撮れるわけだ。
ブラシレスジンバルにはいくつか製品が登場しているが、ラジコン機などに組み込むことが前提なので半完成品(基板とかむき出しだったりする)なものがほとんどだ。
試しに買った「Beholder brushless GoPro gimbal」というこの製品も、新ファームウェアができたと聞いてダウンロードしてみたらarduinoのスケッチだったりして、自作機器の延長線上という感じのするシロモノではあるが、ともあれソースコード(さほど長くない)はなにかと参考になりそうだ。
もっとも、クアッドコプターが買ってすぐに飛ばせるシロモノが登場してきたように、そろそろこちらもマスプロダクト的完成度の高いものが登場しそう。
ブラシレスジンバルは2012年の暮れあたりから発売され始めたのだが、その威力のほどは一気に話題となり、ここ1年ほどで爆発的に普及し、映像のクオリティーも格段に良くなった。
マルチコプター空撮ではGoProないしは同程度のアクションカムを使うことが多いのだが、GoProといえばバイクやスキーなどのエクストリーム動画。こちらのほうでもブラシレスジンバルの導入を考えている人もいるようだ。テレビやYouTubeで素敵なエクストリーム系動画が劇的に安定した絵になっているものを見かけたら、たぶんそれはこういった機材を導入しているはずだ。
ラジコン、特に飛行機やヘリなどの“空物”は飛ばせる場所が限られるなど、ホビーとして楽しむには未だとっつきにくい部分がある。とはいえ、調整の手間要らずのマルチコプターの自律飛行制御やハイクオリティーな空撮ができる小型デジカメなど、ここ数年でかなりの進歩を遂げつつあり、単に飛ばして楽しむのもよし、空撮にチャレンジしてみるのもよし、あるいはテクノロジーの進歩が如実に現われるガジェットとしてウォッチしてみるのも面白いだろう。
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