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愛される情シス 捨てられる情シス

2014年04月24日 07時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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 夜23時、販売管理システム開発会社。オフィスのすみに蛍光灯がついた部署が1つだけ残っている。情報システム部だ。入社3年目、製薬会社から転職した女性担当者は疲れきった目をこすっている。

 「人、増えないのかなあ……」

 情シス部員はここ2年で5人から3人に減らされて、部長を除けば彼女と部下の2人だけ。机には未消化のタスクがたまっている。関連会社の買収に伴う経理系システムの移行、営業から要請があった支局間のネットワーク構築、ファイルサーバーで起きたエラーの原因究明――。

 人数が少ないため、彼女がどれだけうまく仕事を回しても、業務の積み残しは増える一方だ。できることにも限りがある。ソフトウェア開発にMacや自分のマシンを使いたがるエンジニアもいるが、情シスにはセキュリティー対策に割ける人的余裕はないため、断らざるを得ない。おかげで社内では「ガバオタ(ガバナンスオタク)」「IT化石部」と陰口をたたかれ、残業続きで褒められもしない。

 情シスにはこうした苦い経験が付きものだ。経営者にとって情シスはコストセンター。人を減らしても会社が回るなら1人でも削りたい。アベノミクスでも一部企業以外は苦しい状況が続いている。リーマンショックの傷も癒えることなく、情シスを切りにかかる会社もある一方、会社に強く求められている情シスがいる。


事業部門に逗留する「IT華僑」

 「これからは、ゆるやかな『IT華僑』みたいな人が増えていく」

 ITセミナーを開催しているナレッジサイン取締役の吉岡英幸代表はそう話す。部門として情報システム部があるのではなく、それぞれの事業部に情報システム担当者が所属する形で、社内コンサルティングの役割を果たす例があるという。それだけなら今までもあった話だが、ユニークなのは、各事業部に所属しているIT担当者が定例で集まり、横断的にコミュニケーションをとっている点だ。

 「ある飲料メーカー大手は、IT担当者が完全に現場に異動すると個別最適になってしまうのでダメだと考えた。横串をさすために、現場同士でネットワークを作って連携する形にしている」(吉岡代表)

 華僑化が進んでいるのはメーカーだ。本社と工場のような生産現場が離れると、要件が正確につかめずムダが生まれやすくなる。アジアに工場だけでなく流通基盤を抱えているメーカーには、エリアごとの個別最適、グローバルでの全社最適、両面をとらえてデータ戦略を考えるIT担当者が必要となる。

 「情シス部門長も2種類いる。社内のITを良くする仕事がIT部門だという人、そうではなく部門を残したいという人だ。前者のステップとしては、まずIT部門がITを使ったビジネスを統括できるように(部員の)質を発展させる。次に(部署を解体して)『IT活用でいいじゃん』という流れになっていく」(吉岡代表)

 同様にプロジェクト支援も華僑的に運営する企業が増えているという。1つのプロジェクトが始まってから一定のサイクルを終えるまで、IT担当者が社内に出向するのだ。代表的なのはヤフーだろう。


ヤフー成長の影に「華僑」あり

 「予算を渡され、『あとはやっといて』と言われる。そういう仕事ははねのけている」

 ヤフー データソリューション本部・小間基裕本部長はそう話す。ヤフーの屋台骨を支える同部署はデータアナリストの集合体。ヤフーが抱えるすべてのデータを統括する、いわば最強の社内IT担当者集団だ。小間本部長は事業部でプロジェクトが立ちあがるたび、データアナリストを担当部署に「派遣」している。

 検索に始まり、ショッピングモール「Yahoo!ショッピング」や質問投稿サービス「Yahoo!知恵袋」など、サービス部門を横断してデータを集め、分析し、連携させ、プロジェクトの成果を最大化するのが担当者の役割になる。その際、現場のニーズはカラダで学べ、というのが小間本部長の方針だ。

 「(事業部とデータソリューション本部の)両者から人を出して共同でやる、それが重要。ビジネスノウハウや統計学の応用方法のような理論ではなく、上司が現場で何を言って、どれだけ混乱するかを学べ。喜びの声と怒りの声を聞いてこい、潜在的なニーズに目をあてろと言っている」(小間本部長)

 これはあくまで大手の話。一方、中小企業にも、頭をひねって社内に居場所を作っている情シスはある。クラウド時代にも必要とされる情システム部に求められているものは何なのか。詳しくは「アスキークラウド2014年6月号」の特集で。

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