佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第7回
「e-onkyo music」さんにハイレゾ配信の現状を聞いた
ハイレゾブームはジワジワやって来ている!! (2/3)
2014年04月18日 15時00分更新
デジタル配信までの音楽フォーマットの歴史
黒澤 iTunesの音楽配信が日本ではじまったのが、2005年の8月なんですよ。ただ、ハイレゾは2003年くらいには音楽制作の現場では基本フォーマットとして使われはじめていたんです。ただ、当時は商品として流通させる方法としてCDがまだまだメインだったので、24ビットで音楽を作っていても、そこからCD用の16ビットに落としていたというわけです。当時から24ビットでのハイレゾ配信というのは可能で、やっていたところもあったのですが、浸透しなかったし再生する機器も少なかったんです。パソコンがあれば再生できたんですけど、周辺の環境が整っていなくてハイレゾの音楽市場は盛り上がってこなかったですね。
佐武 私も去年くらいに「ハイレゾ」という言葉を初めて知ったので、まだ触れてない人は多いのかもしれないですね。
黒澤 うちでもまだ4万曲くらいしか配信していませんからね。iTunesだと何百万曲にもなりますし……。
佐武 でも、ソニーさんが動いたから若い子にも広まるかもしれませんね。
黒澤 ウォークマンも出しましたし、ハイレゾ配信もはじめましたし、やっぱりソニーが動き出すと違いますね(笑)。
佐武 9周年目にして、いろんな人がハイレゾに興味持つようになって……。
黒澤 そうですね。CDというものが1982年から始まって、もう30年以上になります。30年以上続いた音楽メディアってほかにないんですよ。
佐武 そうなんですね。
黒澤 レコードなどもそれぞれの時代でかたちを変えていますからね。メディアに音を記録して聴くというのは、1877年のエジソンの時代からあるんですけど、最初はロウでできた円筒の筒だったんです。
佐武 そうなんですか?
黒澤 それにエジソンが「メリーさんのひつじ」を吹き込んで録音して再生して、成功したのが始まりと言われています。
佐武 えー、すごい! 物知りですね!!
黒澤 いえいえ。なんとなくこんな仕事をしているからですね。
佐武 すごく勉強になる!
黒澤 音を媒介するメディアとしての音楽はそのあたりからはじまって、円筒形だったものが盤面になってグルグル回るようになったわけです。
佐武 それがレコードの原型なんですね!
黒澤 そのメディアが20年周期くらいで、どんどん変わっていくんですよ。円筒のものがレコードのような盤面になって、盤面から今度はテープになったりとか……。
佐武 あ、テープ!
黒澤 テープも大きなロールテープがあって……。
佐武 知らない……。
黒澤 小学校の授業などで使われていましたよ。
佐武 あ、あ、あ、学校にあった! 大きいのが2つあるやつですね!
黒澤 あれもいくつか種類があるんですけど、それが最終的にはカセットテープになっていったんです。
佐武 カセットテープは知ってます。
黒澤 でも、同じ形態として見ると、CDのように30年は続いていないんです。1982年に音楽がデジタル化してCDが登場し、いまでも販売されています。
佐武 長いですね。
黒澤 一方で音楽配信は2001年くらいに普及しはじめました。アップルのスティーブジョブズの貢献が大きいですよね。「どうせ音楽はデジタルなんだから、メディアから抜き出して配ればいいじゃん」っていうのをビジネスとしてスタートさせたんです。
佐武 なるほど。気づいたら音楽がデジタルになっていた感じがします。
黒澤 1990年代の後半くらいには、みんなパソコンは持っているような時代になっていましたよね。パソコンに音楽に取り込むということは多くの人がやっていて、それをいわゆるファイルシェアリングソフトでやり取りしていたわけです。そこに「Napster」などのアプリが入ってきて、商業化していったわけです。グレーなところからはじまったんですけど、それを合法化しようとアメリカで2000年くらいに「eMusic」というサイトがはじまり、そしてiTunesへとつながります。iTunesの画期的なところは、音楽をダウンロードするだけじゃなくて、管理したりデバイスに転送したりできるところなんです。
佐武 なるほど。
黒澤 パソコンとiPhoneやiPodなどのデバイスをつないで、音楽を持ち出すというライフスタイルを広く普及させたのが、スティーブジョブズという人の大きな功績のひとつだと思うんです。
佐武 そんな偉大な人だったんですね!
黒澤 ただ、iTunesがはじまった時代というのはネットの回線は遅かったから、音楽ファイルを圧縮しないとダメだったんですけど、ほんとはジョブズはもっといい音で配りたかったと思いますね。もう少し長く生きていたら、ハイレゾでの配信を考えていたかもしれません。
佐武 iPhoneにもハイレゾ再生機能が入ってたかもしれないってことですね! すごく深いな、それ。
黒澤 ダウンロード配信で音楽を聴くという、いちばんわかりやすいかたちを普及させたスティーブジョブズというのは偉大な人ですね。そして、彼が作った「サイトで音楽をダウンロードして聴く」というやり方を「e-onkyo music」も使っているわけです。
この連載の記事
-
Audio & Visual
第13回 佐武宇綺、エンジン音とバイオリンの意外な関係に驚く -
Audio & Visual
第12回 東京芸術劇場で荘厳なオルガンの雰囲気に圧倒される -
Audio & Visual
第11回 日本で唯一レコードを作れる工場、東洋化成で“いい音”を探す -
Audio & Visual
第10回 聴けば分かる、ハイレゾで聴く「サラウンド」の実力 -
Audio & Visual
第9回 ハイレゾ時代でも、狙う音は驚くほどアナログ時代と同じ -
Audio & Visual
第8回 「良い音という評価は複雑」 ソードアート・オンラインIIの岩浪音響監督 -
Audio & Visual
第7回 ハイレゾブームはジワジワやって来ている!! -
Audio & Visual
第6回 女子ウケするヘッドホンのポイントはココ! -
Audio & Visual
第5回 最高にいい音が聴ける無料空間「Studio A」の設備がヤバい -
Audio & Visual
第4回 うっきーの答えは完璧!? 聴き比べテストでわかる音源の差 -
Audio & Visual
第3回 イタリア製アンプ「Carot One」はマニアな音を楽しむ第一歩 - この連載の一覧へ