「テレビ事業分社化は、あくまで組織の体制の話。影響はない」。ソニーマーケティングでテレビ事業を担当する、本多健二統括部長は力強く言い切った。4K対応テレビ「ブラビア」新モデル発表会の、壇上でのことだ。
ソニーのテレビ事業の分社化が報道されたのは2月のこと。VAIOの売却および約5000名の人員削減と同時に発表された。「経営のスピードアップが目的」と同社は説明するが、ネガティブな印象で捉えられた側面があったのも事実だ。
テレビを取り巻く状況は依然として厳しい。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2013年の薄型テレビの需要は538万台。地デジ化で買い換え需要が喚起された2011年の、わずか27%程度まで落ち込んでいる。
ただし明るいニュースはある。ソニーの調査では、2011年から2013年にかけて、46v型以上の大型テレビが占める構成比が金額ベースで10%台から約40%にまで伸張。さらに、そのうちの20%弱を4Kテレビが占めているという。
「4Kテレビ市場におけるブラビアのシェアは、金額ベース・台数ベースともに約70%。市場にしっかりと受け入れられている」(本多統括部長)
JEITAも、2018年には4Kテレビの国内需要が2013年の約20倍に達すると予測。「(ソニーが4Kテレビ市場の7割を占めている)現在の状況こそ異常。目指すところは4Kテレビ市場そのものの拡大だ」(本多統括部長)と控えめだが、テレビの主流が4Kへ移行すれば、早い段階でブランドイメージを確立できたソニーは優位に立てる。
懸念はコモディティー化だ。「一般的なフルHDのテレビと比べて、4Kテレビは中級クラスで倍の価格。ハイエンドでは10万円以上違う。価格競争するつもりもない」と本多統括部長は話すが、市場が現在の値付けをいつまで許容するかは未知数だ。
どこまで4Kテレビの高い収益性を維持できるかが、ソニーのテレビ事業再建の鍵を握りそうだ。