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現場に聞いたAWS活用事例第3回

データ分析で「サンクスクジ」キャンペーンの利益を4倍に!

すかいらーくがRedshift+Tableauで実現した「売るためのIT」

2014年04月22日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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ユーザー部門自身が効果を検証し、決定まで

 とにかくスピーディに、かつ低コストにPOSデータ分析をスタートさせたいと考えた神谷氏。大手ベンダーからの提案もあったが、「サイジングに数ヶ月、調達に1ヶ月。1回構築したら、やめられないし、コスト面でもまったくあわなかった」(神谷氏)とのことで、オンプレミスという選択肢は早々にあきらめた。そして、以前から友人にレコメンドされていたRedshiftのセミナーに参加し、その場でRedshiftでの事例を披露したクラスメソッド代表取締役社長の横田聡氏とさっそく名刺交換。数回の打ち合わせの後、1ヶ月後にはシステム構築開始という話になった。今までのシステム構築では考えられないスピード感だ。

クラスメソッド代表取締役社長 横田聡氏

 クラスメソッドは、AWSに特化したシステムの構築や運用、iPhoneアプリの開発で高い実績と技術力を誇るクラウドインテグレーター。2009年あたりからAWSのインテグレーションを手がけているが、「とにかく速く、安く手がける」ことを心がけているという。クラスメソッドの横田氏は、「AWSは変化がすさまじく速い。先週だけで10くらい機能アップデートがあったし、先日は価格が3割下がりました(笑)。こんなに毎日機能が強化されるようなサービスで、1年かけてシステムを作っていたら浦島太郎になります」とのことで、構築も速く、障害対応も自動化する仕組みを盛り込んでいるという。

 今回は、AWSやクラスメソッドのスピード感と神谷氏の意向が合致。会計向けのPOSデータを分析しやすい形でRedshiftに格納したり、データ分析を効率的に行なうための技術支援を提供している。「すかいらーくのマーケティング担当の方から欲しいデータの要件を出していただき、弊社のエンジニアがデータを分析しやすい形に加工。出力する項目と突き合わせる作業を継続的にやっています」(横田氏)。面白いのは、設計・運用、運用までを継続的に提供しつつ、既存のSIのような人数確保型ビジネスになっていない点。「うちは数多くの案件を同時に回しているので、ベストエフォートです。その代わり、多くの案件で得た知見やノウハウを蓄積し、これをお客様に還元できます」(横田氏)というポリシー。「保守という名の追加開発」をやめ、顧客のゴール達成のため、継続的に連携し続けるという。

 最終的な導入決定に際しては、神谷氏がデータのアップロードから実際の検証までこぎ着けたことが大きかった。神谷氏が1ヶ月分のPOSデータをRedshiftにアップロードし、Tableauで実際に分析を検証してしまったのだ。横田氏は、「ユーザーさん自身が触って、検証して、行けるという判断まで持って行ってしまった。今まで高いお金をとっていたコンサルとか不要になったという点で、IT業界にとっても衝撃」と指摘する。

IT部門との連携でスピーディな構築が実現

 IT部門も蚊帳の外というわけではない。むしろマーケティング部、外部のSIer、そしてPOSデータを主管するIT部門が密接に連携したことで、スピーディなシステム構築が実現したといえる。今回、Redshiftに転送するためのバッチを手がけたのが、すかいらーくコーポレートサポート本部 情報システムグループ PC・イントラチームの川原敏氏だ。「分析の部分は神谷がしっかりにぎっているので、要件をきちんと聞いて、会計データをRedshiftに投入するバッチを設計・製造しました」(川原氏)。

すかいらーくコーポレートサポート本部 情報システムグループ PC・イントラチーム 川原敏氏

 川原氏は、初めて触れたというRedshiftについて高く評価する。「とにかく汎用性が高いのに驚きました。(OSを意識せず)Redshiftを独立したサービスとして扱えるし、実績のあるPostgreSQLをベースにしているので、とっかかりも早い」(川原氏)。要件にあわせて作ったCSVファイルを、ストレージサービスであるAmazon S3に格納し、加工してRedshiftに取り込んだデータを、ODBC経由でTableauにロードする。長らくベンダー側で受発注システムの開発を手がけてきた川原氏だが、「データベースはともかく、データ分析やBIに関して素人ですが、そんな私でも簡単に扱えました。小売りのAmazonならではの、ユーザー視点の設計やユーザーインターフェイスがありがたかった」と語る。また、クラスメソッドを含め、AWSのユーザーがさまざまなノウハウを公開しているため、Redshiftのような新しいサービスでも戸惑わずに利用できたという。

マーケティング部門とIT部門の未来とは?

 神谷氏は、マーケティングや営業でITが必須になる時代を見据え、今後はユーザー部門とIT部門の融合する必要があると力説する。神谷氏は、「ある案件を外の業者と相談したら、サーバーを倍に増やしてくださいと提案されましたが、実際はインデックスの張り方を変えるだけで、十分現状のサーバーで処理できることがわかりました。IT部門がきちんとしていなければ、できることもできないし、できたとしても外部にお金を払わなければならないことになります」と語る。

 川原氏もIT部門の存在意義の拡大に使命感を燃やす。「デバイスの管理が重く、IT部門はコストセンターになっています。従業員がもっと仕事しやすい環境、もっと商品を売れる提案や戦略を提案していかなければならないと思っています」と持論を語る。こうした現状でのAWSの導入は、社内のIT活用を見直す大きな契機となったようだ。川原氏は、「社内を見渡せば、クラウド化できるものはいっぱいあります。今回、マーケティング部のプロジェクトで大きな風穴を開けてくれたので、今後はクラウド化でコストを下げ、浮いた予算でIT部門が施策を打ち出せるようにしていきたいです」と抱負を述べる。

マーケティング部門、IT部門、そして外部のインテグレーターが目的に向かって緊密に連携しているのが、非常に印象的だ

 マーケティング部としての次のチャレンジは、オンライン施策だという。神谷氏は「折り込みチラシはやはりマスでしかない。オンラインだと、一人一人のアクションが見えるし、それぞれにカスタマイズしたコンテンツやクーポンを提供できます」と語る。

 単なるクラウドの導入ならず、マーケティング部先導によるビッグデータ活用、守りから攻めに転じるための「売るためのIT」、マーケティング部とIT部門の緊密な連携、アジャイル型のシステム構築・運用など、あらゆる面で新しい今回の事例。日本を代表する企業から、こうした血湧き肉躍るアグレッシブな事例が生まれたことは、業界内にも大きなインパクトをもたらすに違いない。

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