このページの本文へ

アマゾンとマイクロソフトを牽制するグーグルの秘密兵器「Andromeda」

2014年04月15日 22時37分更新

文● Jodi Mardesich via ReadWrite

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

クラウド開発者の獲得競争ではスピードが重要だ。

Andromeda

数年前にグーグルは、ユーザがウェブを閲覧する際、何よりもスピードを重視しているということに気付いた。グーグルはその発見を応用し、「Andromeda」と名付けられたツールを通じて今度は開発者を惹きつけようとしている。

グーグルが開発者たちに有料で提供しているホスティングサービスインフラ「グーグル・コンピュート・エンジン」で、Andromeda が使われようとしている。Andromeda はネットワークの速度を向上させるためにグーグルが使っている一連の技術で、先日、グーグル・コンピュート・エンジン上の4つのゾーン(GCE 上でリソースを配置する為の概念)で、これが有効にされた。


Andromeda とは

Andromeda は、グーグルのクラウドを利用する顧客が契約できる製品というわけではなく、開発者が直接叩くための API を持っているというわけでもない。では一体何だというのか?

グーグルの上級エンジニア、アミン・ヴァーダットは次のように説明している

「Andromeda とはグーグルの仮想化ネットワーク技術のための、ソフトウェアで定義づけられるネットワーク(Software-defined network, SDN)基板であり、仮想化ネットワーク上の供給リソースのプロビジョニング、設定、管理および、ネットワーク内のパケット処理を行う為の複合的な仕組みのことだ。」

紐解いてみよう。データセンターやストレージ、ネットワークを用意して新しいサーバを立ち上げるより、ソフトウェアによって既存のハードウェアを新たなやり方で活用するという選択をする企業が増えてきている。ハードウェアの利用方法をソフト上で定義してやることで、高価なハードウェアの分散共有が可能になる。SDN の場合は、グーグルのデータセンター奥深くにあるサーバ、ルータ、スイッチなどのリソースがクラウドのインフラの土台となる。

ネットワークの仮想化とは、多くの顧客(グーグル自身であれ、クラウドの顧客であれ)が同じネットワークを共有していても、それぞれが独立したアドレス管理、ファイアウォール、アクセス管理のマネジメントを有するということである。

グーグルのプロダクト・マネージャー、ス二ル・ジェームスは言う。「もしあなたが自分のインフラを持ちたいのであれば、それも可能だ。しかし、将来的にその規模をどう拡大し、管理していくのかを考えなければいけない。グーグルのクラウドは必要に応じたスケールでビジネスを成長させる力を与えるものだ。Andromeda は、自社だけでなく顧客にとっても、物事をいかにスケーラブルかつ強固なものにするかというグーグルの企業理念を示す一例だ。」

グーグルの顧客にとってこの事は、自身がクラウドに乗り換える際の代償がより少なくなるなることを意味する。

グーグルは SDN のアプローチを取る唯一の企業というわけではない。クラウドコンピューティングのライバルであるアマゾンやマイクロソフトも、同じく SDN アプローチをとっている。マイクロソフトは Azure の SDN 機能を開発するために4年間で100人の開発者を投入した。グーグルと同様、彼らも Azure で使われているのと同じ SDN 技術を、X-Box Live、Skype, Office365などの他のサービスに利用している。アマゾン・ウェブ・サービスは、CloudFormation のような SDN 機能を数年前から有している。

しかし、グーグルは開発者向けの SDN 機能を展開したことで追い上げをみせるだろう。高スループットの実現のために研ぎ澄まされた、自前の巨大なインフラを持つという事は、独自のアドバンテージとなる。


開発者の争奪戦

先月、グーグルはクラウドサービスの値下げを行った。Andromeda は、グーグルが開発者を獲得するための新たな武器となる。その武器とはパフォーマンスだ。ここでいうパフォーマンスとは、データのスループットを指す。

Andromedaは、まだいくつかのクラウドで有効化されたばかりだが、顧客は既にその違いに気づいている。

ロンドンでサーバーおよびウェブサイトの監視サービスを提供している Server Density 社の CEO デイビッド・ミトンは、グーグルクラウド(Andromeda有り)、グーグルクラウド(Andromeda無し)、アマゾン EC2サービスで、それぞれベンチマークテストを行った。それによると Andromeda が有効の場合、アマゾンのクラウドより9倍も早いという結果が出た(これは目を見張る結果の様に思えるが、実のところ控えめな結果といえるだろう。ミトン氏によると Andromeda なしの場合でも、グーグルクラウドはアマゾンのものより7倍早いという)。

データのスループットはクラウドサービスの唯一といえるベンチマーク指標ではあるが、すべての顧客がこれを気にかけるという訳でもない。しかしながら、より安価でかつハイパフォーマンスであるという事は、やはりいくらかの顧客にとっては切実な問題だ。

ミトン氏は現在利用中のクラウドサービス・プロバイダである SoftLayer からの乗り換えを検討しており、各プロバイダを評価しているところだが、提供されるパフォーマンスとコスト面のメリットから、グーグルに傾倒しつつあるという。

ミトン氏は「アマゾンのは非常に高くつく。多額の先行投資が必要だ」と言っている。

彼が求めているいくつかの機能のうち、グーグルが提供していないものもある。例えば「異なる地域間でのスループットを保証する」といったような機能は今のところ提供されていない。だが都合の良いことに、Andromeda は将来的にそういったサービスを構築する基礎となるものなのだ。


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中