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石井英男の『研究室研究所』

この研究者・開発者がスゴイ!――石渡昌太氏

海外と日本でクラウドファンディングに成功した「RAPIRO」の秘密

2014年05月01日 11時00分更新

文● 石井英男

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ニコニコ超会議で人気を博した
あの「necomimi」にも関わっていた

 石渡さんは、RAPIRO以外にもいろいろ面白いものを開発してきた。なかでも有名なのが、ニコニコ超会議でも販売され、大人気となった脳波で動く猫耳「necomimi」であろう。

ニコニコ超会議で販売され、一世を風靡したnecomimi

―― RAPIRO以外にもさまざまなプロダクトを手がけられていますが、そのなかでもnecomimiは有名ですよね。

石渡 「necomimiは試作開発に携わっていて、製品版でも関わっています。これは依頼仕事ですが、他にも、ゆるキャラやイメージキャラをロボットにして動かすような仕事もよくやっています」

―― 石渡さん自身は、特にロボットアニメや萌えアニメが好きというわけではないですよね。

石渡 「ですね。かわいいキャラクターは好きですけど」

―― そのほうが製品としてバランスのいいものが作れるかもしれません。

石渡 「思い入れよりも、製品として成り立たせることのほうに軸足を置いています。趣味で作っているわけではないので」

―― 開発のペースが速いですよね。やろうと思ったら半年くらいで、大体できちゃうと以前おっしゃっていましたが、機楽を設立して何年になりますか?

石渡 「創業3年目です。まあ、単純に“一人でやっているから速い”というだけだと思いますけどね」

高専ロボコンで鍛えられ、自信がついた

 石渡さんは、ほぼ一人でハードウェアもソフトウェアも担当し、試作品を作っているのだが、この道に進むきっかけはなんだったのか。彼の生い立ちについて聞いてみた。

―― この道に進むきっかけは? また、ハードとソフトを同時にこなせるようになった理由を教えてください。

石渡 「昔から工作とかモノを作るのが好きで、仕事にしたいなと。特に機械を作るのが面白くて、NHKの高専ロボコンにも参加していました。そもそも高専ロボコンに出場するために高専に進んだので(笑)。

 高専では機械工学が専門でしたが、どうしても電子回路やプログラミングを覚える必要に迫られました。というのも、ちょうどルールの切り替え時期に当たってしまいまして……。

 以前は回路やプログラミングが分からなくても、“とりあえずモノを遠くに飛ばせばいい”というような方向性だったので、機械のみで解決できたのですが、僕の頃から、ある程度自動操縦にしましょうとか、ココの間は手動で操縦しちゃいけませんとか、一番大きかったのは、操縦は無線のみというルール変更ですね。僕が3年目の年から無線操縦ルールに切り替わりました。

 僕のチームは、回路をできる人が僕も含めて誰もいなかったんです。うちの学校は機械科の有志が高専ロボコンに出場していたので、それまではスイッチとモーターを直結していて、機械設計で勝っていたのですが、無線で操縦しろとなると、スイッチとモーターを直結するわけにはいきません。

 電子回路ができないと出場すら不可能ということで、仕方なく僕が回路をやることになったのです」

高専ロボコン出たさに高専へ進学した石渡さん。電子回路にチャレンジしたきっかけもロボコンだったという

―― 必要に迫られて高専3年目から回路の勉強を始めたと。機械科では授業で電子回路はやりませんよね。

石渡 「一応、電気回路という科目はあって、抵抗の計算の仕方などは学びますが、電子回路はそういったものだけでできているわけじゃありませんからね」

―― では、独学でマスターしたのですか?

石渡 「そうですね。で、その年、なんとか間に合わせて出場できたのですが、そのときに必死で勉強をして『こういうこともできるのか!』と。そこで世界が広がったような感じですね。1つ大きな自信になりました

―― 最近は、高専ロボコンでも自律動作の割合が増えていますから、情報系や電子系の人が中心なのかと思います。

石渡 「当時はまだPIC全盛で、しかもCコンパイラが有料だった時代だったので、アセンブラで書いていました」

―― 有償って高かったんですか?

石渡 「たぶん数万円だと思いますが、学生には高いですし、そもそもC言語を知らないといけないし、頼れる本もアセンブラのものが大半で……。今はそれこそArduinoとかありますけどね」

―― アセンブラってすごく面倒じゃないですか。

石渡 「ねえ、今考えるとなぜあんなのやっていたんだろうって(笑)。まあ、C言語のほうが簡単にできるということすらわからない状態でしたからね。昔はいちいちパルスの幅を計算して出していましたが、今ならwaitとかdelayで済むことですよね」

RAPIROは今後もしっかり売っていきます

―― では、今後やりたいことや、将来の夢を教えて下さい。

石渡 「RAPIROはこれからもしっかり製造・販売を続けていきますし、サポートや情報を充実させていきたいなとは思っています。

 今後という意味では、もうちょっと製品寄りを目指したいですね。RAPIROは組み立てキットですから、完成した製品を販売できればと。しかし完成品になると、技術面とは違う意味でのハードルがありまして。

 作るのは割となんでも作れると思いますが、完成品を販売すると、法律関連の認可や対応も必要になりますから、そのへんの実績作りなど徐々にステップアップしていきたいなと」

RAPIROの内容物一覧。今後も販売を続けていくという

―― 夢はまだまだ大きいと。

石渡 「野望や具体的な目標はないのですが、逆に言うと現在は消費ペースが激しい時代なので、今思っていることなんて、5年も経ったら古くなってしまいます。ですからその時代、その時代で『あれはよかったね!』と言ってもらえるようなモノを作っていけるようにしたいですね。

 次の数年のために、今きちんと実績を作っておくことで、また次のステップに進めるのではないかなあと思っています」

―― では、今後も楽しみですね。

石渡 「何をやるかは、自分でもさっぱり考えていません。RAPIROもRaspberry PIや3Dプリンターの登場といった流れがあってのことなので」

―― クラウドファンディングも昔はなかった仕組みですし。あと思ったのは、クラウドファンディングって『達成した分だけ作って終わり!』というプロジェクトが結構あるような気がするなかで、RAPIROは、Makuakeでも成功していますし、一般販売にもこぎ着けているところが素晴らしいと思っています。

石渡 「達成した分だけのほうが断然楽ですよ。継続することはやはり責任もありますし、すごく大変です」

今回の取材は、葛飾区優良工場の文字が輝くミヨシ本社で行なった

ミラノサローネにもRAPIROを出展

 RAPIROは、国籍を問わず思わず欲しくなる、デザイン性に優れた二足ロボットキットであり、世界中から注目が集まっている。RAPIROは、4月6日より開催されていたミラノサローネにも展示されていた。ミラノサローネとは、世界最大級のデザイン見本市であり、世界中から多くの人が訪れる。アメリカと日本で高い評価を得たRAPIROは、ヨーロッパでも話題を呼ぶことであろう。

ミラノサローネでのRAPIRO出展風景

―― ミラノサローネへの出展は大変じゃないですか?

石渡 「厳密に言うと、ミラノサローネと連動しているフオーリサローネへの出展ということになるらしいです。日本で例えるなら、東京ビッグサイトで開催する大イベントと連動して秋葉原でも別イベントが開催中、みたいな感じでしょうか」

杉山 「でも会場は結構大きな工場の跡地で、技術屋さんがたくさん集まると聞いていますよ」

石渡 「今年はジャパンパビリオンを作るらしく、そのなかの1つとして出展しています。あとはほぼ同じ時期にMaker Fair Shenzhenという別イベントもありまして、そちらにはスイッチサイエンスさんが行く予定ですね」

―― 今日はありがとうございました。


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