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元NTT研究開発技術本部長 戸田巌氏の“破壊的イノベーション”の起こし方

電話とネットの半世紀を支えた技術者が語る「常識否定のために」

2014年04月11日 09時00分更新

文● 大森秀行

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大企業が破壊的技術イノベーションをビジネス化できない理由

 さて、運良く「破壊的イノベーションの種」を得られたとしても、それがビジネス的な成功につなげられるかどうかはまた別の話だ。破壊的技術イノベーションがビジネス化されるまでの典型的なプロセスは、次のようなものだ。

 「大企業の研究部門で破壊的技術が生まれても、なかなか製品化には至らない。なぜなら主要顧客――つまり既存製品の顧客に意見を求めても、『いらない』と言われてしまうから。開発者は嫌気がさして会社を飛び出し、スタートアップを立ち上げる。反対に、企業の側は主要顧客の意見を取り入れて持続的技術イノベーションの開発に精を出す。結果、スタートアップが成功して市場が成長してから、大企業が参入するということになる」(戸田氏)

「大企業が破壊的技術をビジネス化できない理由は、大企業が既存顧客の要求を満たすことに最適化されているからにほかならない」(戸田氏)

 だからこそ、もしも破壊的技術イノベーションを手にしたら、スタートアップを起こすべきだと戸田氏は熱く語る。

 「スタートアップを起こして、程よい規模の企業と組んで新規市場を開拓する。大企業からの妨害を避けるには、既得権益の強い業界は避けたほうがよい」(戸田氏)

破壊的技術イノベーションのビジネス化モデル

 もっとも、大企業でも破壊的技術をビジネス化できる可能性はあるという。スタンフォード大学などで教鞭をとるスティーブ・ブランク氏は、以下の条件を満たせば大企業でも可能だと主張している。

  • 既存事業部の外に新組織を作る
  • 10件中、1件しか成功しないことを受け入れる
  • 新組織には経営資源を安定的に供給する
  • 新組織には「創業者」タイプの人間を集める

 大企業には既存ビジネスを伸ばす「拡張者」タイプの人間が大半なので、最後の条件は難しいと戸田氏は指摘するが、基本的には同意だという。

* * * * *

 最後に戸田氏は、破壊的イノベーションを起こしたいと考えている人に向けたエールとして、4つの教訓を紹介した。

■「一匹狼たれ」:常識に囚われていては、イノベーションは起こせない。自分のアイデアを追求すること。
■「一人で考える時間を大事に」:一人で考える時間がなければ、独創的なアイデアは生まれない。
■「仲間を集める工夫」:アイデアは自分で考えても、ビジネス化するには仲間が必要。
■「技術以外の勉強」:日本には専門の技術には長けていても、お金をどうやって集めるかという点に考えが及ばない人が多い。

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