大企業が破壊的技術イノベーションをビジネス化できない理由
さて、運良く「破壊的イノベーションの種」を得られたとしても、それがビジネス的な成功につなげられるかどうかはまた別の話だ。破壊的技術イノベーションがビジネス化されるまでの典型的なプロセスは、次のようなものだ。
「大企業の研究部門で破壊的技術が生まれても、なかなか製品化には至らない。なぜなら主要顧客――つまり既存製品の顧客に意見を求めても、『いらない』と言われてしまうから。開発者は嫌気がさして会社を飛び出し、スタートアップを立ち上げる。反対に、企業の側は主要顧客の意見を取り入れて持続的技術イノベーションの開発に精を出す。結果、スタートアップが成功して市場が成長してから、大企業が参入するということになる」(戸田氏)
だからこそ、もしも破壊的技術イノベーションを手にしたら、スタートアップを起こすべきだと戸田氏は熱く語る。
「スタートアップを起こして、程よい規模の企業と組んで新規市場を開拓する。大企業からの妨害を避けるには、既得権益の強い業界は避けたほうがよい」(戸田氏)
もっとも、大企業でも破壊的技術をビジネス化できる可能性はあるという。スタンフォード大学などで教鞭をとるスティーブ・ブランク氏は、以下の条件を満たせば大企業でも可能だと主張している。
- 既存事業部の外に新組織を作る
- 10件中、1件しか成功しないことを受け入れる
- 新組織には経営資源を安定的に供給する
- 新組織には「創業者」タイプの人間を集める
大企業には既存ビジネスを伸ばす「拡張者」タイプの人間が大半なので、最後の条件は難しいと戸田氏は指摘するが、基本的には同意だという。
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最後に戸田氏は、破壊的イノベーションを起こしたいと考えている人に向けたエールとして、4つの教訓を紹介した。
■「一匹狼たれ」:常識に囚われていては、イノベーションは起こせない。自分のアイデアを追求すること。
■「一人で考える時間を大事に」:一人で考える時間がなければ、独創的なアイデアは生まれない。
■「仲間を集める工夫」:アイデアは自分で考えても、ビジネス化するには仲間が必要。
■「技術以外の勉強」:日本には専門の技術には長けていても、お金をどうやって集めるかという点に考えが及ばない人が多い。