破壊的イノベーション、持続的イノベーション
ここから戸田氏の講演は、インターネットのような破壊的イノベーションがなぜ必要なのか、どうすれば生み出せるのかという方向に展開していく。まず戸田氏は、日本におけるイノベーションの現状について次のように概観する。
「技術的なイノベーションには、従来とまったく違う技術による『破壊的イノベーション』と、既存の技術を改善/改良する『持続的イノベーション』がある。現在の日本は、破壊的イノベーションがやりにくい一方で、持続的イノベーションは新興国に追い上げられているという状況にある」
しかし、社会が成熟したからといって破壊的イノベーションが起こせなくなるわけではない。海外に目を向けると、現在でもさまざまなイノベーションを生み出す人がいる。
「インターネットのイノベーションに携わった人たちを見ると、TCP/IPを作ったロバート・カーン、Webを作ったティム・バナーズ・リー、ブラウザを作ったマーク・アンドリーセンなど、その多くが20~30代で大仕事をやっている。この分野の人々が理系出身なのはある意味妥当だが、面白いのはAmazon.comのジェフ・ベゾス、Googleのラリー・ページなど、ビジネス的なイノベーションでも理系出身者が活躍していること。理系の大学、学生といっても、海外のほうが幅広く勉強をしているということかもしれない」(戸田氏)
「ひらめき」を得るためのテクニック、その共通点は
イノベーター的な人物の性格として、戸田氏は次の5つを挙げた。
- 好奇心
- 問題意識
- ひらめき
- 執念
- 勇気
これらのうち、戸田氏は「ひらめき」を取り上げ、どうやったらひらめきを得られるかを語った。まずは11世紀の中国の文人、欧陽脩(おうようしゅう)の言葉を引いた。
「欧陽脩という人は『三上(さんじょう)』ということを言っている。これは、『馬上(ばじょう)』『枕上(ちんじょう)』『厠上(しじょう)』のことで、すなわち馬に乗っているとき、寝ているとき、トイレに入っているときに、ひらめきを得やすいということ」(戸田氏)
そして、戸田氏自身のひらめきのテクニックを披露する。
「まず『寝る』こと。行き詰まったときは寝てしまう。寝ている間も脳は休んでおらず、記憶を定着させたり、知識の再構成が行われたりしている。次に『考えない』こと。何かを強く意識せず、あえて瞑想すること。それから『環境を変える』こと。これは欧陽脩が言った三上と同じで、いまと場所を変える、やっていることを変えるとひらめくことがある。『見方を変える』。考えていることを文章にしたり、人に質問したりして、角度を変えてみること。そして最後は『体を動かす』こと」(戸田氏)
こうしたひらめきのテクニックには、ある共通点があると戸田氏は言う。
「これらに共通することは、一人で考える時間を重視しないといけないこと。最近は、スマホでいつでもどこでも人とコミュニケーションが取れるが、常識を覆す破壊的なイノベーションには一人で考える時間が必要」(戸田氏)
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