インターネットはそれまでの通信の“常識”を全否定した
インターネットがこれほどまでに急速に普及したのは、この技術が「破壊的だったからだ」と戸田氏は言う。インターネットの設計思想の、どこがどう「破壊的」だったのだろうか。戸田氏は次のようにまとめる。
- 既存のネットワークどうしを簡単につなぐ
- 既存のネットワークの中には手を入れない
- ネットワークの構成は絶えず変化する
- ネットワークはパケットロスの責任を持たない
- 通信品質を保証しない
今となってはこうした特徴も当たり前のように感じられるが、古くから通信事業者が提供してきたキャリアネットワークの設計思想と比較すると、それがとても「破壊的」なものであったことがよくわかる。
「たとえば、インターネットは通信の信頼性を保証しない。途中でパケットがなくなったり、パケットの順序が入れ替わって届くこともある。キャリアネットワークの場合は、そうしたことが起きないように高度で複雑な設計をしていた。だがインターネットは、設計思想としてそれを許容した。届いたパケットの順序を直したり、ロスしたパケットの再送を要求するのは受信側の役割ということにして、ネットワークは責任を持たない。通信品質も保証しない」(戸田氏)
電電公社~NTTで技術者としての経験を積んできた戸田氏にとって、正反対の性格を持つインターネットとの出会いは衝撃的だったわけだ。
「『通信品質の保証』はキャリアにとって常識であり、わたしも電電公社に入社したときにすぐ教え込まれたものだ。それを、インターネットはいとも簡単に、『ベストエフォート』という一言で否定してみせた。インターネットは通信の革命と言ってよいと思うが、『常識を否定しなければ革命は生まれない』ということの良い例でもある」(戸田氏)
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