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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第33回

レトロで新しい、フィリップスのLED電球「Slim Style」

2014年04月09日 17時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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技術的イノベーションと、コスト

 Slim Styleは白熱球換算で60W(11W)と40W(7W)のモデルがあります。また色味も、電球色とソフトホワイト色があり、普通の電球のように扱えます。そして価格。LED電球でありながら、米国の中ではかなり割安な1個10ドル(60Wモデル)です。

 この価格を実現しているのは、白熱球をつぶしたデザインにしたことから、LED電球のデザイン上の欠点であるヒートシンクを取り除くことができた点がイノベーションになっています。LEDを集合させて電球を作るのではなく、馬蹄状に並べることで、ヒートシンクがなくても熱を逃がす構造を実現しているとのこと。デザインと技術的問題とコストを同時に解決するアイディアがここにあります。

点灯中に横から見た図。こちらの方向にも光りが広がってきています。光線の広がり方も含めて、白熱球と同じように使うことができました

 米国では2007年にEnergy Independence and Security Actという法律が通り、白熱球の米国内での製造が段階的に廃止されていきました。2011年の100W電球製造停止から、2014年の40W白熱電球製造停止へと段階的に進んできています。こうした背景から、次世代の電球のコストが下がることが懸案だったと言えます。

 フィリップスのSlim Styleは、こうした市場の変化も、捕まえることができるのではないでしょうか。

 日本でも震災以降、節電への更なる配慮が進んできました。蛍光灯電球にしてもLED電球にしても、省エネだけでなく10年単位という非常に長い寿命もウリです。裏を返せば、家庭の中で、一度こうしたエコ電球に切り替えてしまうと、10年は電球を買い換えなくなることを意味します。

 フィリップスとしても、今後電球のビジネスは、白熱球からのリプレイスが進めば進むほど、細っていくことが想定されるでしょう。しかしそれでも、デザインと技術のイノベーションで価格を抑えるという心意気には、今日もスイッチを入れるごとに感謝の念を抱かずにはいられません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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