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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第247回

半導体プロセスまるわかり リーク電流解決の切り札HKMG

2014年04月07日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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High-K材料+Metal Gateは大成功
インテルは45nmプロセスに以降

 HKMGによる効果は非常に顕著だった。下の画像は80nm NMOSでの試作結果であるが、Gate OnとGate Offの電流比は1000倍以上にも達していることがわかる。

80nm NMOSでのGate OnとGate Offの電流比。この比が大きいほど、電圧そのものを下げられ、結果としてリーク電流を下げられる。また流せる電流が大きいというのは、スイッチング速度を上げられることにもつながる

 まだこの時点では90nmのP1262が利用されていたから、実際の45nmでどうかという数字は当然出てこない。こちらに関しては、実際にP1266が動き始めた2007年1月に、もうすこし具体的な数字で示された。下の画像がその結果である。

トランジスタ密度が2倍に向上、というのはプロセスの微細化にともなうもので、あまりHKMGとは関係ない

 スイッチング電力を30%削減でき、スイッチング速度が同じならサブスレッショルド・リークを5分の1に、あるいはサブスレッショルド・リークを同じに保てば速度を20%向上させられるとした。

 またゲート・リーク電流は10分の1に削減できたとしており、HKMGを導入した効果は確かにあったということだ。この45nm世代における主要な構成は2007年の時点で初めて明らかにされた。

45nm世代における主要な構成は2007年に初めて公表された。High-K絶縁膜はハフニウムベース、PMOSとNMOSで異なる金属を使う、というのが公式に明らかになったのはこの時点だ

 インテルとしては、このHKMGプロセスをモノに出来たのは非常にうれしかったのだろう。この2007年の秋に開催されたIDFでは、下の画像の衣装までわざわざ作ったほどだ。

IDF2007初日の基調講演。前から見ると野球のユニフォームっぽい

そして背番号は45nmにちなんで45。ちなみに名前入りなのはゲルシンガー氏だけ。スタッフは名無しの45番を着ていた

 もっともこの45nmプロセス、ハイスピードロジック向けのP1266は成功を収め、Penryn世代のCore 2や、初代のNehalemに採用されたほか、AtomもまたこのP1266を利用して製造された。

 ただAtomの本命は、このP1266をベースにSoC向けとしたP1267になるはずであった。このP1267に関しては最終的にP1266.8という名称で、ごく一部の製品を製造するに至ったに過ぎない。

これは2009年のIDFにおけるBob Baker氏の基調講演より。P1267は最終的にP1266.8という名称になった

よく読むと「45nmプロセスを使ったSoC」であって、45nm SoCプロセスを使った、とはどこにも書いていない。実際、P1266.8を使ったのはCE3100(Sodaville)のみである

 実際このSoCプロセスが満足に作れるようになったのは、次の32nm世代のSoCプロセスであるP1269であり、これもあってかインテルの45nmプロセスのページにも、SoC周りの話が一切ないのはもはやご愛嬌というべきか。ただ、そうは言ってもHKMGの実現は他社に比べて3年近く先行していたのは事実である。

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