このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

ソフトウェア工学の先駆者が明かす、手作り計算機時代の「創意工夫」体験

“日本初のハッカー”和田英一氏、黎明期のコンピュータ研究を語る

2014年04月04日 09時00分更新

文● 大森秀行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ついには計算機で音楽を奏でるハックまで?

 ここまで紹介してきたのはいずれも実用性を求めたハックだったが、和田氏が最後に紹介したのは遊び心にあふれたハックだ。1959年、和田氏は上述のPC-1を使って音楽を演奏しようと試みた。

 この音楽演奏は、PC-1の拡張で追加されたフリップフロップの機能を応用したものだという。フリップフロップは、「0」または「1」の値を一時的に保持(記憶)できる論理回路である。

 「PC-1のフリップフロップには、『y30』『y31』という(値の)セット命令と『yl30』『yl31』というリセット命令の、計4つの命令がある。(これにスピーカーを連動させて)「1」をセットしてスピーカーのコーンを押し、「0」で引っ張る。これに振動数と周期を与えれば、音階を付けて音楽が演奏できるはずというアイデア」(和田氏)

フリップフロップに保持された値(0か1)とスピーカーのコーンを連動させ、高速に値を変えることでコーンを振動させる(=音を出す)

画面右が、和田氏の開発したPC-1用の音楽演奏プログラム

 この演奏プログラムでは、PC-1が備えていた「“聖徳太子”機能」を使用しているという。これは、10人の話を一度に聞けたという聖徳太子の故事にちなんで名付けられた命令で、音楽らしく、より正確なタイミングで音を鳴らすために必要だった。

 「聖徳太子機能は、I/O機器が準備中だったら、命令のアドレスに飛んで計算を行うことで、入出力と計算を同時に(並行して)行うための機能。PC-1は最初からこの命令を備えていたが、実際に使ったのはこのプログラムが初めてだった(笑)」(和田氏)

 実際にプログラムを開発したところ、研究室内で「これは面白い」と話題になっていろいろな曲を入力して遊ぶようになった。一方でほかの研究室では、「このところ高橋研から変な音がする」と噂になっていたという。

* * * * *

 なお今回の講演は、情報処理学会 歴史特別委員会が行っている「オーラルヒストリ」の取り組みの一環として企画された。これは、コンピュータの発展に寄与してきた先人たちが語る歴史を記録、保存し、若い世代にも伝えていこうという活動である。同日は、和田氏のほかに元NTT常務取締役の戸田巌氏も自らの体験を語った。その内容は後日、あらためてお届けする予定だ。

※追記:なお情報処理学会では同日、高橋秀俊研究室の「パラメトロンアーカイブス」(パラメトロン素子およびPC-1計算機のハード/ソフト開発資料一式)を、2013年度の「情報処理技術遺産」に認定したことを発表しています。(編集部)

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ