依存しているのに、軽視されがちな情報セキュリティ
新規顧客開拓の2つめのツールは、情報セキュリティだ。
企業においては情報漏洩に対する危機感が高まりつつあるが、神野社長は、「300人以下の中小企業においては、95%の経営者が、自社のIT管理に不安を持っているのではないか。メールなしには仕事ができないにも関わらず、それが止まったときにはサポートできる人がいない企業が多いのが実態。また、下請け企業ではセキュリティで問題が起こせば取り引きが停止してしまうという危機感がありながらも、十分な対策が講じられていない」と指摘し、「多くの中小企業において、当社のUTM(Unified Threat Management=統合脅威管理)に関する提案が響いている」とする。
Windows XPは商談を始めるのに最適なツールだった
そして、3つめがWindows XPである。
2014年4月9日のWindows XPのサポート終了に伴い、PCのリプレース需要が発生しているのは周知の通りだが、これが新規顧客開拓には有効なツールになっているという。
「Windows XPをきっかけにして、新たな顧客訪問し、そこから、情報セキュリティやバックアップなどの話が始まることが多い。『Windows XPにも困っているんだが、実はこんなことにも困っているんだ』という話も出てくる」
いわば、Windows XPは、新規顧客にドアノックするためのツールになっていたわけだ。
神野社長は、「Windows XPのサポート終了は、PC本体の販売台数が増加することよりも、Windows XPをきっかけとして、お客様の課題について話し合うことができた点が大きかった。新規顧客開拓において、Windows XPはオールマイティなカードだった」とする。
Windows XPは多くの企業にとって共通の課題であり、それをきっかけに新規顧客との商談が始まりやすいのは事実だろう。そして、PC本体だけの商談では利益率は低いが、PC+ソリューションの提案となれば、収益性も高めることができるのは確かだ。
業界内では、Windows XP特需の反動が懸念されている。4月9日を境に、ぱったりと需要が止まるわけではなく、上期まではその影響は持続するものの、下期からはPCの販売台数が一気に減少するというのが業界内の見方だ。
だが、神野社長が指摘するように、PCの販売台数の減少への影響だけでなく、ソリューション提案が減少する遠因になるであれば、業界への影響は遙かに大きくなるといえよう。
この連載の記事
-
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ -
第580回
ビジネス
コンカーの第2章は始まるのか、SAPの生成AIを使って効率的な経費精算を -
第579回
ビジネス
AIの筋トレはいまから始めるべし、マイクロソフト津坂社長がCopilotの議論から得たもの -
第578回
ビジネス
大赤字からの再起はかるバルミューダ、その足掛かりは? -
第577回
ビジネス
日本の強さは量子力学におけるトンネル効果があるため、量子と出会い、広げよう - この連載の一覧へ