EMCジャパンは3月26日、“Software-Defined Storage”プラットフォームの最新バージョン「EMC ViPR(ヴァイパー) 1.1」を発表した。発表会には導入前検証を行った三菱電機情報ネットワークが出席し、自社クラウド基盤における検証結果と課題を明らかにした。
ViPRは、「ViPR Controller」と「ViPR Data Services」という2つの機能で構成されるソフトウェア製品。「VMware vSphere」環境向けの仮想アプライアンスとして提供されている。
ViPR Controllerは、サードパーティ製を含む複数の物理ディスクアレイを仮想的に集約、単一のストレージプールにまとめ、セルフサービスやAPI経由によるストレージの自動プロビジョニングを可能にする。また、Controllerの上位サービスに位置づけられるViPR Data Servicesは、ストレージプールへのデータアクセスを仲介/変換して、オブジェクトストレージ形式でのデータ保存/アクセスを可能にする役割を担う。
ViPRは、昨年5月の「EMC World 2013」で発表され(関連記事)、国内では11月から提供が開始された(関連記事)。EMCによれば、グローバルではクラウドサービスプロバイダーのほか、製造業、金融業など幅広い業種の大手企業において導入や導入前検証が進んでいるという。
今回発表されたバージョン1.1では、こうした早期導入/検証顧客からのフィードバックに基づく機能改善が行われている。まずControllerにおいては、クラスタシステムへのプロビジョニング機能、Boot LUNプロビジョニング機能が追加されたほか、ファイルシステム マウント機能が拡張された。また、「Symmetrix VMAX」ストレージのリモートレプリケーション機能(SRDF)に対応している。
Data Servicesでは、新たにViPR配下のファイルストレージをHDFS(Hadoop File System)データ領域として活用できる機能が追加された。これにより、通常のHDFS環境における単一障害点(ネームノード)が排除され、信頼性の高いデータサービスがHadoopに提供できるとしている。
ViPRの価格は、個別見積もり(初回購入時は最小構成100TB以上の購入が必要)。基本的には統合対象ストレージの容量(TB)に応じた課金となる。ただし、国内初版発売時に「270万円から」とした価格帯からは「大きく変わっていない」(EMC)と説明した。
また、サポートしているサードパーティのストレージハードウェアは、現在のところNetApp製品となる。これについては今後、大手ベンダー製品を中心に拡充していく方針だと強調した。
クラウドサービス適用を目的に検証実施、メリットと課題は?
同日の発表会には、ViPRの早期検証プログラム(EAP)に参加した三菱電機情報ネットワーク(MIND)の鈴木壽明氏が出席した。鈴木氏は、MINDが顧客向けに提供する各種クラウドサービスのストレージ基盤への適用を目的として、昨秋から今年2月にかけてViPR(バージョン1.1ベータ版)の検証を行った結果を紹介した。
本検証において、MINDでは「プール化や自動化による効率化」「統合管理ツール連携」「高度なストレージ構成への対応」「ハードウェア共有環境における品質確保」という4つの評価ポイントを中心に、計65項目の評価を実施した。その結果を次の画面のようにまとめている。
鈴木氏によれば、検証の結果見つかった課題をEMCにフィードバックし、その一部が今回のバージョン1.1に実装されたという(前述したControllerの「Boot LUNプロビジョニング機能」追加)。
一方、ViPR導入によるメリットは3つあったと述べた。具体的には、サーバー管理者とストレージ管理者が個別ツールで管理していた部分を抽象化により統合できたこと、ニーズに応じて数種類の品質のリソースをセルフサービスで提供できること、そして、自動化によりプロビジョニングの時間を大幅に短縮できたことだ。「これまで専門SEが数時間から1日かけて行っていた作業が、5分程度に短縮された」(鈴木氏)。
鈴木氏は今後、フィードバックの反映状況を見ながら次期バージョンを検証し、並行して実際にサービスに取り込むためのポータルとの連携強化、運用設計と実装を行ったうえで、「なるべく早期にサービスへの適用を行いたい」と語った。
なお、ViPR Controllerについては評価版が無償提供されている。商用利用不可で、クラスタ構成ができないなどの機能制限もあるが、コミュニティを通じてEMCにフィードバックを送ることができる。