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いつの間にか通信料金はタダになっていた

2014年03月26日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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 現在発売中の「アスキークラウド2014年5月号」は16ページに渡って、IT業界で不振の続くパソコンだけでなく「インターネットも終わってた」というテーマで特集を組んでいる。

 Google検索からGoogle Playのようなプラットフォームへ、さらにはアプリケーション内部へとビジネスが移っている。米国で通信会社が通信内容を勝手に規制してはならないというネットワーク中立性に見直しの動きが出始めた。インフラはもちろん衣類や雑貨などの日用品にも通信機能を付ける「IoT」(インターネット・オブ・シングス)の潮流も生まれている。「インターネットの終わり」にはいくつかの現象が同時多発的に起きている。

 そしてもう1点、通信料金もいつの間にか無料になりつつあるのだ

 記者はiPhoneを利用しており、毎月934円の基本使用料と5200円のパケット料金を払っているが、今はMVNO(仮想移動体通信)や公衆無線LAN(Wi-Fi)など選択肢が増えた。日本通信やビッグローブ、IIJのようにSIM事業の参入事業者が増え、月額980円のSIMのように格安プランも次々登場している。

 NTTドコモがMVNO事業者向けに設定しているパケット接続料は加速度的に下がっており、2008年度から5年間で1400万円から180万円へと約10分の1に低下している(10Mbpsのレイヤー3接続の場合)。

Price

携帯電話のパケット接続料(2014年3月24日NTTドコモ発表)

 背景にはモバイル事業者の競争を活性化させたい総務省の思惑がある。現在、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルの利用者料金はほぼ横並びだ。大手3社の寡占で事実上競争がなくなった状態は問題だとして、総務省は2010年にパケット接続料算定基準のガイドラインを策定した。帯域あたりの設備費用をMVNOの利用者数で割って料金を出すもので、分母にあたる設備費用が増えない限りは下がることになる。

 「現在、総務省では『2020-ICT基盤政策特別部会』を開いており、取り組みへの評価はこれから。価格差をつけたMVNO事業者が出てきたので、これからいい感じに市場が伸びていけばと思っている」(総務省)

 消費者心理として、MVNOの利用料金が下がっているにも関わらずNTTドコモの利用者料金が下がらないのは納得いかないが、ともかくモバイルの通信料金は競争原理で確実に低下した。

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セブンスポット

 さらに公衆無線LANは、月額500円以下が当たり前の世界だ。記者が読書用に使っているiPad miniに限って言えばWi-Fi専用モデルなので、通信料金はBBモバイルポイントの月額525円だけ。「セブンスポット」のように登録すれば利用無料というサービスも登場している(ただし利用できるサービスには制限がある)。

 日本と比べて3GやLTEなどのモバイル環境が強くない北米では、無料のWi-Fiを使って小売店が利用者にクーポンや広告を配信する流れが起きている。いわばWi-Fi先進国の通信事情が日本にいつ入ってこないとも限らない。「無料の通信と引き換えに、個人情報がどんどんマーケティングに使われる」というなんとも不気味な世界が、太平洋を隔ててすぐそこに迫っている。

 パソコンに光ファイバーをつないで月額6000円、スマートフォンにLTEをつないで月額4000円という時代から、SIMだけで月額980円、ついにはWi-Fiだけで月額無料の時代へ。ただし広告が付き、利用にも制限がある。「かつてインターネットは金がかかるが自由だった」──10年後、あなたがそんなことを言っていないとも限らない。では、通信無料時代には誰がうまい汁を吸っているのか? 答えはアスキークラウド本誌で。

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