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「キルラキル」はウェアラブル時代の傑作アニメ

2014年03月25日 07時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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Image from Amazon.co.jp
キルラキル 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

 「生命戦維」という有機的な糸で縫製された学生服「極制服」を身につけ、人知を超えた力を手に入れる。もの言うセーラー服「鮮血」を着た流子ちゃんこと纒流子が活躍するTRIGGER制作のアニメ「キルラキル」を見ながら、これはガンダムやエヴァのようなロボットアニメではなくウェアラブルアニメの傑作ではないかと感じた。

 (「ど根性がえる」の「ピョン吉」もいるが、あれはつぶされたカエルがTシャツに貼りついてでも生きるという根性が素晴らしいので、テクノロジーな話ではない)

 IT業界では現在、自動運転車に代表されるロボット技術と平行し、「ウェアラブル」の字義どおり、着るコンピューターが続々と登場している。たとえばインテルはレストデバイスと組んで極小半導体「クオーク」を組み込んだベビー服「ミモ」を開発したし、国内ならNTT・NTTドコモ・東レの3社が共同で機能繊維「hitoe」を発表した。

 hitoeを使った肌着を身に付けると、自分の生体情報が見える。取材時、実際に記者がhitoe仕様の肌着を試着すると、心電図が映ったスマホが自分の一部になったような錯覚があった。開発陣を前に肌着一枚で、流子ちゃんもこんな気持ちなのかと極めて個人的な感想を抱いた。

これがhitoeに使う端末。小さいhitoe肌着形態。オレンジが欲しい
hitoe肌着を着た私。やせすぎだ私の心電波形。画面は開発中のもの

 それにしても通信会社のNTTが、どうしていつから繊維事業をやっていたのか。聞けば数年前、心電図をとるための医療技術として、布型の電極を開発しようとしたのが始まりだったのだという。

 「たとえば重篤な心臓疾患があり、心筋梗塞のリスクが高い方は、手術後の在宅ケアが必要になる。持ち運びできる小型の心電計をつけ、医師が遠隔から心電図を見るという実証実験をしたことがあった。ところが電極をつけっぱなしにしていると、3分の1以上の人がかぶれてしまった。在宅モニタリングが広く普及していく中で、密着性が高い、布型の電極を実装できるように開発を進めてきた」(NTT担当者)

 健康系プラットフォーム「わたしムーヴ」を運用するNTTドコモには、サービスの利用促進にウェアラブルデバイスのhitoeを活用したいという思惑もある。また将来的にはいわゆる予防医療に役立つ技術になるはずだと開発陣は期待を寄せている。

 たとえば高速バスは、鉄道や飛行機と違い、運転手が心臓発作を起こして運転不能になったとき、自動でブレーキをかける装置がない。hitoeがあらかじめ生体情報を取り、心電図に異常があったときに警告を出せば、事故を未然に防げるかもしれない。他にも、うつ病と職場ストレスの関係を明らかにする自律神経機能検査を簡易化し、見えないパワハラをあぶり出す──といった応用につながる可能性もあるという。

 「既存の取引先にとらわれず、いろんな異業種とのコラボを広げることで、きっと新しい、社会に役立つ用途が出てくるはず。業界の枠にとらわれずどんどん話を進めていきたい」(東レ担当者)。その思いはNTTも共通のようで、hitoeを活用したサービスそのものを充実させるにしても「業界の内外にいる様々なコンテンツホルダーと、いかにアライアンスを速く構築し、関係を作れるかが勝負だ」(NTT担当者)。

 だが、これはあくまで表面上の話だ。なぜいまアパレル業界なのか。業種を超えてウェアラブルデバイスを開発する企業の背景には、IT業界そのものが抱える課題と狙いがある。詳しくは発売中の「アスキークラウド2014年5月号」で。なお雑誌の特性上、残念ながら記者の思い入れの強い流子ちゃんの話は掲載していない。

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