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カルソニックカンセイが語る、グローバル展開を進めるうえでのインフラ要件

海外との自動車部品CADデータ共有にアカマイを採用した理由

2014年03月18日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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設計データを共有する「グローバルPDM」、導入の狙いは3つ

 グローバルBOMと並行して、四方氏らはもう1つ、製品のCADデータなど設計データを共有可能にする「グローバルPDM(Product Data Management)」の導入も進めてきた。昨年(2013年)6月には国内で稼働を開始し、今年5月以降に海外で立ちあげを予定している。「BOMとPDMの双方をグローバルで統一することにより、製品に関するデータを一元管理できる最低限の基盤が整うことになる」(四方氏)。

海外拠点における製品開発能力向上を目指し、グローバルオペレーションを支援する「グローバルBOM」「グローバルPDM」の構想を2006年に提案した

 四方氏によれば、これまで設計データは「各地域で個別のシステム(ファイルサーバーなど)に保管、管理されているというのに限りなく近い状態」だった。これをグローバルPDMへ統合することには、3つの狙いがある。

 「まず、今後導入予定の新しいCADへのデータ変換が、グローバルPDM上で一括で行えるようになる。次に、グローバルBOMとのシステム連携で、BOMデータと設計通知、CADデータの3つの情報をバラバラではなくセットでリリースできるようになり、設計手配の意図を明確化して手戻りなどを防ぐ。そして最後に、データ管理レベルを向上させ、海外拠点とのコラボレーションを容易にしてLCC活用を促進する」(四方氏)

 各地域で個別に設計データを管理してきた従来は、たとえば日本のエンジニアが海外拠点のCADデータを見たい場合には、まず電話で現地のエンジニアにデータを探すよう依頼し、それを送ってもらうという手順が必要だった。グローバルPDMが完成することで、「必要なときに、必要な部品データを自分で探し、取り出せる環境を実現することができる」(四方氏)。

四方氏によればグローバルPDMの導入には「3つの狙い」がある

専用線ではなくインターネット+アカマイを選択した理由

 そして、こうしたグローバルPDMを実現するためには「ネットワークソリューションが大きな鍵を握っていた」と四方氏は説明する。数百メガバイト程度のCADデータでも安定的かつ高速にやり取りでき、しかも情報セキュリティが十分に担保されるネットワークでなければならないからだ。

 カルソニックカンセイでは4つのソリューションについて検証し、最終的に「インターネット+アカマイ」方式を選択した。具体的には、アプリケーション高速化ソリューションである「IP Application Accelerator」と「TERRA Alta」を利用している。

 「まず、通信速度と情報セキュリティという2つの“Must要件”を満たす案として、『新規専用線の敷設』と『インターネット+アカマイ』に絞られた。さらに“Want要件”であるコストと導入リードタイムを比較して、最終的に『インターネット+アカマイ』方式が選ばれた」(四方氏)

グローバルPDMに接続するネットワークとして4つの案が検討された。コストやリードタイムの大きな差もありアカマイを選択

 今後も海外拠点の増加が見込まれるなかで、拠点が増えるたびに多額の開設コストと運用コストがかかる専用線よりも、インターネットベースのアカマイのほうがリーズナブルであるという判断だった。採用決定後、カルソニックカンセイでは2012年末からテスト環境をクラウド上に構築し、アカマイソリューションの基本性能検証を開始した。

 「検証では、PDMアプリケーションとアカマイキャッシュの不整合など予想外に多くの課題が発生し、結局は期間を半年間延長した。もっとも、製品開発というビジネスクリティカルな領域に新しいソリューションを導入するプロジェクトであり、それだけの期間が必要だったのではないかと考えている。現在では、アカマイやベンダーの協力によって技術的な課題解決のめども立っており、本番稼働時の仕様が確定できている」(四方氏)

(→次ページ、インターネット利用の“うまみ”を強みにしたい)

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