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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第134回

インパルス応答を評価軸に置いた意欲的スピーカーはどうして作られたのか

いかに正確な音を出すか—パワードスピーカー「ECLIPSE TD-M1」の挑戦

2014年03月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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人間は周波数特性を聴いているわけではない

―― 最近のオーディオ機器ならインパルス応答は測定していると思うんです。ということは、TDシリーズは逆にインパルス応答しか見ていないのか、ということにもなるわけですが。

小脇 最後の作りこみのときに、耳で聴いたりはします。でも、ほとんどインパルス応答でやります。人間の耳っていい加減なんです。音量が1dB違っただけで、人間の耳の周波数特性ってガラガラ変わっちゃう。スタンフォード大学の実験で、1つのボトルから2つのボトルにワインを分ける。1つは高級ラベル、1つは安物ラベル、中身は同じだけど、みんな高いラベルの付いたほうが美味しいと感じてしまう。

―― オーディオの世界はそんなのばっかりですよね。でも周波数特性は見なくていいんですか?

小脇 人間の耳は周波数特性を聴いているわけではなくて、空気の動きを鼓膜で聴いているんですね。周波数特性は、空気の動きを分析した一部の結果でしかない。FFT(高速フーリエ変換。信号を正弦波の周波数に分解して周波数特性を可視化する)はご存じですか?

―― はい。

小脇 あれで周波数特性を計測しようとすると、低い周波数ほど波長が長いので、ポイントを多く取って分解能を上げなければならない。たとえば4万4100Hzでサンプリングされたデータの3万2768ポイントを取ると、0.7秒位の区間の周波数特性を計算することになる。パーカッションの音の違いは、数m/s程度の波形の中で表現されるわけですが、それを平均するとスポイルされてしまう。過渡特性(時間的な推移で音が変わる)を持った本当の楽器の音というのは、そのデータではわからないんです。

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