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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第134回

インパルス応答を評価軸に置いた意欲的スピーカーはどうして作られたのか

いかに正確な音を出すか—パワードスピーカー「ECLIPSE TD-M1」の挑戦

2014年03月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ハイエンドじゃないのに型番「1」の理由

―― 型番が「1」じゃないですか。相当気合入ってるように思えるんですが。

小脇 ええ、入ってますよ、それはもう。

―― でも気合の入った「1」番の製品って、一番高いハイエンドの製品に付けますよね?

富士通テンTDプロダクト長の小脇さん

小脇 僕個人としては、これが一番作りたかった製品なんです。もちろんハイエンドのオーディオも好きでやっていたんですが、オーディオショーでは、男性の割合が高い。ご年配の方でもオーディオ好きな方は多いです。

―― ははは。いや、たしかにその通りですけど。

小脇 従来のオーディオというのは、結局機械を楽しんでいたんですね。音楽を楽しんでいたんじゃない。だけど音楽の好きな女性もたくさんいます。ライブ会場でも女性は少なくないでしょ。でしたら女性にも簡単に扱えて、ナチュラルで気持ちのいい音がそのまま身体に入ってくる、そういうスピーカーが作りたいとずっと思っていました。

DSPだけでは現実に勝てない

―― 富士通テンというとカーオーディオのイメージなんですが、なぜタイムドメイン方式のスピーカーなんですか?

小脇 もともと私はDSP(デジタル信号処理)で、車の中の周波数特性をフラットにするシステムの開発をやっていたんです。でも、いくらやっても音がよくならない。その後に由井啓之さん(タイムドメイン理論の提唱者)に会って、ちゃんとしたスピーカーで聴いたら、いい音が出る。結局、信号処理をよくしても、スピーカーがダメならダメなんだと。軽自動車のEFI(電子燃料噴射)をチューニングしてフェラーリに勝てるかと言ったら無理なわけです。

―― オレは今までEFIだけで勝とうとしてきたのか、と。

小脇 そうそう。これは信号処理だけじゃダメなんだと。エンジンを強化するとか、ボディーを軽くするとか、もっと現実と戦えるようにしないと。それでスピーカー屋になったんです。

―― では、このスピーカーが普通のスピーカーとどう違うのかを教えて下さい。

小脇 オーディオ機器それぞれに色が付いていたんです。だから出てくる音は正確じゃなかった。それをどれだけ無色透明に近づけるか。それが僕らの音に対する考え方です。今まではスピーカーの周波数特性が平らであればいいという考え方だったんですが、どのメーカーのスピーカーもカタログ上の周波数特性は平らなのに音は違うんです。

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