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KWCのcorabbitチームはグローバルなのに日本に馴染み過ぎ。

2014年03月12日 03時32分更新

文● 松下 康之/アスキークラウド

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 前回のHDEの海外からのインターンを活用して社内の英語力を高めるというショック療法的な事例(http://ascii.jp/elem/000/000/853/853379/)に較べて今回お話を伺った株式会社KDDIウェブコミュニケーションズのcorabbitチームは実に日本に馴染んでいる人たちだった。今回は、corabbit事業部のゼネラルマネージャーの宮西洋充氏、ディレクター金子崇志氏、デベロッパーのセバスチャン・レッティグ氏、同じくデベロッパーのカヴェン・ミッチェル氏、デザイナーのケネス・リュー氏に話を聞いた。

左からセバスチャンさん、カヴェンさん、ケネスさん。

左からセバスチャンさん、カヴェンさん、ケネスさん。

 企業がグローバル化を目指す時に必ず出てくる言語の壁を乗り越えるために社員に英語研修をさせる企業は多いが、KWCのcorabbitチームはだいぶ様相が違っていた。なにしろ最初に加わったメンバーであるドイツ出身のセバスチャンさんは元々ドイツの大学で日本語を勉強し、その後、ドイツの大学に留学していた日本人女性と一緒に来日、仕事を探している時に技術者が集まる勉強会でcorabbitの責任者、宮西さんと知り合って仕事を見つけたという偶然としては出来すぎのような経緯でKWCに参加しているのだ。そしてその時の日本人女性と後に結婚し、奥さんもドイツ語ができることからKWCが提供するドイツのホームページ作成サービス Jimdoのグループで働いているという。またジャマイカ出身のカヴェンさんはKWCの別部門に応募してきたところ、corabbitのチームのほうが良いだろうということで決定。オーストラリアはメルボルン出身のケネスさんはカヴェンさんの紹介でKWCに入社。3人とも就職時には日本語が出来て日本での生活にも馴染んでいたということで、雇う側にとってみれば一番抵抗なくスムーズに組織に参加しているわけだ。

 責任者の宮西氏にこの組織の成り立ちについて話を伺った。「もともとは新規ビジネスを企画していた時に、グローバル化というのは目標としてあったのです。その時に単純に日本人だけで考えてもグローバルなサービスって考えづらいと思いまして。それがあってメンバーとしては外国人の方に入ってもらおうと思っていたところ、たまたまとあるイベントでセバスチャンと知り合いまして、いきなり日本語が喋れない外国人を採用するよりはということで入って貰いました。」

 実際にインタビューした時も全部日本語でこの3人はほとんど日本語だけでコミュニケーションすることが可能なのだ。ただし、「実は金子が入社するまでは4人での会議は英語でした。でも今は日本語が基本で大事なところだけは英語でという感じです。楽天さんの『大事なことなので日本語で言います』というヤツの逆です(笑)」と宮西氏は語る。実際にコミュニケーションは日本語と英語による会話だが読み書きは英語だそう。「やっぱり日本語は難しいです。大学で勉強していた時は漢字も書けましたが、今はもう全然ダメです」とセバスチャンさんは語る。「まぁ、日本語が書けないのは日本人も一緒なんですけどね、もうコンピュータが無いと私も漢字は書けません」と苦笑する宮西氏。

 去年の7月に入社した金子氏は「私は英語が全然ダメなので、最初は戸惑いましたけど、みんなとっても良い人達で違和感はもう無いですね。あとでこっそり『さっきの英語のディスカッションは何を話していたの?』と宮西に聞いたりしてます。私は関西出身なので、まぁ、東京の人からみたら言葉も違うし、外国みたいなモンですから。でもこれからは少しは英語を勉強しようかな」と笑いながら語ってくれた。

 既に日本に馴染んでいる3人だが困ったことは無かったのだろうか?「東京は大都市なのに電車が24時間動いていないのがちょっと残念。でも新宿駅の朝の混雑も最初はビックリしましたけど、ドイツよりはみんな優しそうで、日本のほうがイイです」とセバスチャンさんは語る。「私は日本が第二のホームみたいに感じます。昔、住んでいたことがある家という感じです。今住んでいる吉祥寺も大好き。吉祥寺が好きな理由はジブリがあるからですけど」と語るのはカヴェンさん。「原宿とか代官山もおしゃれで好きです。日本はどこに行っても街がキレイ」とケネスさん。当然かもしれないが、アニメなどの日本文化にはかなり親しんでいるようで、「好きなアニメはワンピース」(カヴェンさん)だそう。

 今後の海外展開などを想定して、カヴェンさんはアメリカでのデベロッパー向けの窓口としての業務もこなしているという。元々、グローバルを志向したサービスを考えれば日本人のことを理解して生活に馴染んだ外国人を採用し、言語の壁をなるべく低くしたうえで企画開発に邁進するのは非常に妥当な方法論だろう。ただし、今回の様に3人が3人とも日本語が喋れて日本の生活にも慣れているというのは非常に稀なのかもしれない。東京に居る外国人が集まるイベントやパーティでアンテナを張り巡らしておくと「日本が大好きで日本語もある程度出来るエンジニア」を獲得することが出来るのかもしれない。しかも友だち関係で紹介も効くとなれば、採用担当は要チェックだろう。

 「corabbitのチームでは金子のように英語が出来なくてもいいのです。英語力よりも仕事が出来るか?が大事。これからも英語ありきではなくて良い人がいれば採用するでしょうね。英語は出来れば良いですけど必須ではないです。」と宮西氏は語る。グローバル展開をチームとして乗り越えようという意志が感じられるコメントだ。

KWCのcorabbitチーム。左が金子さん、右奥が宮西さん。

KWCのcorabbitチーム。左が金子さん、右奥が宮西さん。

 しかしあまりにも日本に馴染み過ぎていて日本人と話している錯覚に陥りそうなインタビューであった。corabbitのグローバル展開に期待しよう。

参考URL:corabbit(デザイナー向けコラボレーションツール) https://corabbit.com/home

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