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イヤホン好きならコレ! といえる製品

コスパ最強! 2万のイヤホンが12万円の「K3003」に匹敵する?

2014年03月08日 12時00分更新

文● 四本淑三 撮影●篠原孝志

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ハイブリッド型イヤホンとは

 これまで高音質なイヤホンといえば、バランスド・アーマチュア型ドライバーを複数使用した「マルチドライバー」の製品が優位という状況でした。

 バランスド・アーマチュア型は、針のような振動板がチリチリと震えるような構造になっており、振動板自体が小さいので微細な入力信号に対するレスポンスがよく、特に中高域の再生能力に優れているようです。ドライバー全体の構造も小さいため、耳の中に押しこむカナル型イヤホンに向いており、昔から補聴器のイヤホンに使われていたわけです。

 その反面、コーン紙を振動させるスピーカーをそのまま小さくしたような構造のダイナミック型に比べると、振動板の面積が小さいのでワンストロークで動かせる空気の量が少ない。それもイヤホン全体の設計次第なのでしょうが、ちょっと低域がいまいち弱いかなあ、というのが一般的な評価になっておりました。 

 そこをどうにかしようと、1基のバランスド・アーマチュア型ドライバーが2基に、2基が3基に、3基が4基に、そして5基と、一体どこまで増やせば気が済むんじゃというような、ハウジング内容積の限界に迫るマルチドライバー化、高価格化が進んでいったのであります。

 では低域はよく出るダイナミック型はどうなのかと言えば、バランスド・アーマチュア型とは逆に、中高域がちょっとね、というのもこれまた定評だったのでした。

 ならば中高域のレスポンスに秀でたバランスド・アーマチュア型と、低域がよく出るダイナミック型を組み合わせればいいじゃない。そういう発想は当然のこととして出てくるわけです。それが、今回のDN-1000のような「ハイブリッド型」と呼ばれるイヤホンです。

 が、実際の製品を試してみると、そう簡単にうまく行く話でもなかったようです。

AKG K3003の成功で各社注目?

AKG/K3003

 今から何年ほど前でしょうか。今世紀に入りほどなくして、カナル型イヤホンで定評のある、某大手からハイブリッド型イヤホンが発売されたのですが、結局こうして製品名もメーカー名もボカシて書かなければならない程度の音でしかありませんでした。

 低域は確かに出ているもののブーミー過ぎ。ユニット間の特性のつながりが悪いのか、あるいはレイアウトの問題なのか、ともかく盛大にコムフィルターのかかったような(注:遅延した信号が混ざった際に生じる櫛歯状の周波数特性で、フランジャーやフェーザーのスイープを止めたような)音を楽しむしかない、というようなものでした。これは軽い地獄でした。

 そこからしばらくハイブリッド型の製品の話は聞かなくなりました。が、2011年にAKGがあのK3003を出したところから世の中は動き始めます。それくらい、あのイヤホンの音はインパクトが大きかったということです。全帯域に渡る解像感、ハイエンド、ローエンドともに伸びきった広帯域感、そして低域の収束のよさ。すべての要素がシャープに決まっており、まあ、これなら10万円を超える値段でも仕方ないかと、諦めの付くような完成度でありました。

 今では、そのK3003に追いつけ追い越せというので、さまざまなメーカーがハイブリッド型を出しています。最大手のソニーも去年、ハイブリッド型「XBA-H」シリーズをカナル型イヤホン(ソニーは密閉型インナーイヤーレシーバーと言っています)の最上位機種としてラインナップしており、最上位のXBA-H3なんかは、かなり立派な音がします。

XBA-H3

 ただ、そんな現在でも、成功作はそれほど多くない。やはりこのハイブリッド型のチューニングは生産工程も含めて相当難しいようで、コムフィルター臭い変なクセ、ブーミーで収束の悪い低域、そうした問題が残る製品も多く、聴き比べるたびにK3003のすごさを思い知るような状況でした。

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